2023/04/16

Johnny "C" / Soul'd Out! ('86)

A1634-5789B1I Was Made To Love Her
A2When a Man Loves a WomanB2Two Steps From the Blues
A3Mustang SallyB3I Thank You
 とっぽい雰囲気の兄ちゃんが、「例のマイク」を手にしている写真。しびれますなあ。
 このジャケットを手に取るや、B級ロックの予感が五体の毛細血管を駆け巡りました。

 有名曲がズラリと並んだリスト。しかもたった6曲しかありませんぜ。
 Johnny "C"なるうさん臭い名前といい、B級ロックの予感は、もはや確信へと変わりました。

 聴いてみると、まんまとB級ロックです。
 タイトル通りソウル・ミュージックへの、というかウィルソン・ピケットへの憧憬を隠そうともせず、兄ちゃんが大胆不敵に歌い上げます。

 いやはや、これはたいへんなノドの持ち主ですよ。
 のっけのA1からアクセルペダルを床にめり込むくらい踏みつけて、サービス精神の燃料フルスロットルです。
 B級ロックの規格を大きく外れる、A級の歌唱力。A2のロングトーンも安定感抜群。いったい何者なんだよこの兄ちゃん。

 以前ダン・ロジャースの項で述べたように、B級ロックは氏素性なんて知るか!の世界なので、この兄ちゃんがどこのどいつなのかは正直どうでもええ。
 きっとインターネット検索すればイロイロわかるんでしょうな。でも今の時代、「あえて検索しない」という選択肢があってもいいじゃないですか。
 ただ単に、歌のうまい兄ちゃん、もうそれでいいや。

 バンドの連中は鉄壁の演奏力で、歌のうまい兄ちゃんをわっせわっせと盛り立てます。B3など、ただもうひたすらに凄まじい。
 ただしB級ロックの伴奏は、モタついたり、危なっかしかったり、ヨレヨレになったりグダグダになったりするのが「らしい」と主張する好事家もいるでしょうから、この辺は好みが分かれるかもしれません。

 本作に難点を挙げるとすれば、その音質にあります。
 音が悪いわけではありません。むしろその逆です。

 いかにもアナログな、ぶっとい音こそB級ロックにはふさわしい、と私は考えます。でも本作は、やせた音をしているんですよね。
 音楽業界が、デジタル化の大波に呑まれつつあった時代です。このスタジオにもデジタル機材が導入され、CDっぽい音作りがなされてしまったのでしょう。

 B級ロッカーとバンドのみなさんを檻に入れ、鉄格子の外から録音しているような余所々々しさというか。
 全体にうっすら残響がかかっていて、これがヒンヤリした空間を醸しています。そのせいで、バンドの熱気や一体感を削いでしまった感は否めません。

 これがもしクリス・アイザックなら、こういう音作りで正解なのです。結局、キャラクター次第ってことなんだろうなあ。

 ともあれ、歌のうまい兄ちゃんの圧倒的な熱唱の前では、音質のあれやこれやなんてまるっきりどうでもいいこと。ジャグジーでオナラをするような些事です。

 全6曲。計24分。エンジン全開で駆け抜けます。
 あなたのハートに火をつけて、焼け野原にするB級ロックの知られざる快作。聴くべし。
★★★

Johnny "C": Vocals

The Ken Smith Band
Ken Smith: Guitar, Organ
Byron House: Bass
Jeff Jones: Drums
Jane Pearl & Jonell Mosser: Background Vocals

The Mondo Guitars
Kenny Greenberg
Sam Bush
Tony Britt
Paul Worley

Also Featuring
Dennis Burnside: Organ
Eddie Bayers: Drums
Maura O'Connell & Nanette Britt: Background Vocals

Produced by Paul Worley and John Cowan

Recorded at Studio By The Pond and Audio Media, Nashville, TN
Engineered by Richard Adler and Hollis Halford
Mastered at Masterfonics by Glen Meadows

Photography by Melodie Gimple
Jacket Design by Raymond Simone

Digitally Mixed and Mastered

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