2022/10/02

Chris Isaak ('87)

A1You Owe Me Some Kind of LoveB1Wild Love
A2Heart Full of SoulB2This Love Will Last
A3Blue HotelB3You Took My Heart
A4Lie to MeB4Cryin'
A5Fade AwayB5Lovers Game
B6Waiting for the Rain To Fall
「見当たり捜査」という聞き慣れない言葉。

 NHKなどで紹介されたため、最近はご存知の方も多いでしょう。
 指名手配犯や逃亡犯、潜伏犯の顔や特徴を数百名、脳内にインプットした捜査員が駅前などに立って、人の流れをジーッと見つめるお仕事です。
 自分からは動かず、ただ見ているだけ。朝から晩までずっとずっと。ものすごく効率悪そうに思えます。しかしこの待ちに徹した方法が、驚くほどの釣果を上げているらしい。

 ただ記憶力に秀でているだけではこの仕事、おそらく務まらないでしょう。ずっと立ち続け、行き交う人々をひたすら見つめ続け、現れるかどうかわからん犯人を待ち続けるには、尋常ならざる強靭な精神力が必要になるはず。警察や犯罪捜査の素人であるわれわれにさえ、この仕事がめっちゃキツそうなのは容易に想像できます。

 それだけに小説やドラマの作り手を甚だインスパイアするらしく、近年はちょくちょく登場するようになりました。『機捜235』の梅雀さんがそうですね。
 印象的だったのは、『サギデカ』で見当たりのベテランを演じた中村靖日。あまりにも長いこと定点観測を続けてきたために、精神が侵食され無表情・無感情のロボットみたいになってしまった刑事を抑えた演技で体現していました。

 顔つきは変わっても、耳は変わらない…見当たり捜査に関して、よく聞く話です。
 20年前の写真と比べ、現在の顔が変わり果てていることはあり得る。しかし耳の形は、歳月を重ねても同じなのだそうです。万人不同・終生不変、とまで極端ではないにしても、捜査員はそこに着目するのだとか。
 そういや、防犯カメラにチラリと映った耳から人定する、という離れ業を『機捜235』でも発揮していましたね。

 クリス・アイザックの、このかっこええジャケットを手に取った折、私はそういうことを思い出してしまいました。
 ごらん下さい。イケメンは、耳の形までもイケているのです。
 この写真の主役は、顔ではありません。耳です。イケ耳です。もはや耳かきサロンの嬢からだってお金むしり取れそうなレベル。

 イケ耳を正面から撮るだけでは飽き足りなかったカメラマンは、向かって左から入ってくる光を利用して、耳の形を壁に投影しています。影を強調するため、顔面の光が強すぎて白飛びしかかっています。
 つまりカメラマンは、限られたラティテュードの中で、イケ顔よりもイケ耳を選んだのです。みんな見てくれよ、どうだかっこいいだろこの耳の形、とアピりたかったのです。ちなみに撮った人、けっこう有名な写真家さんらしいぜ。

 さて、『エレファント・マン』や『デューン 砂の惑星』の監督デヴィッド・リンチも、耳に対するこだわりは人一倍の御仁です。耳が気になって気になって仕方のないリンチ監督が、いつしかクリス・アイザックに魅了されてしまうのは、まるでペヤングが流し台に落下するような必然のなりゆきと言えましょう。90年代、リンチとアイザックのコラボレーションは映画界、音楽界、テレビ界を巻き込んでさんざん引っかき回すことになります。

 アイザックにハマった映像作家はリンチだけではありません。ロジャー・コーマンの弟子筋にあたるジョナサン・デミ監督はかねてよりアイザックの大ファンで、『羊たちの沈黙』に俳優として起用しました。
 SWATの隊長役ですな。私がこの映画を初めて見たときには、まったく気が付きませんでした。まあチョイ役ですからねえ。ロジャー・コーマンの出番ともども、後にレーザーディスクで再見して確認することになります。

 アルバムの内容も、ジャケット同様か、それ以上にかっこよく仕上がっています。
 やれ音楽性がどうとか、サウンド・プロダクションがこうとか、そういう些事を語る余地がまったくありません。
 もう、ただただかっこいい。問答無用のかっこよさ。かっこよさしかない。徹頭徹尾、それだけで寄り切ってしまいました。

 本作がリリースされたのは、1987年。すでにLP・CD併売の時代に突入していました。
 しかしこのサウンドは、アナログ・レコードときわめて親和性が高いです。CDをお持ちの方、ぜひレコードも聴いて、比べてみて下さい。ジェームス・カルヴィン・ウィルゼイの妖しいギターの音色は、アナログなればこそ。
★★★

Produced by Erik Jacobsen

Recorded by Tom Mallon and Dave Carlson
Mixed by Lee Herschberg

Musicians
Chris Isaak
James Calvin Wilsey
Kenney Dale Johnson
Rowland Salley
Prairie Prince
Chris Solberg
John Robinson
Pat Craig

Crew
Tim Ryan
Louie Beeson
Victor McPoland
Aaron Gregory

Management
Erik Jacobsen and Mark E. Plummer

A Trans / Tone Production

Dust Sleeve Photography: Michael Zagaris and Pamela Gentile
Art Direction / Design: Jeri McManus Heiden and Kim Champagne

Cover Photography: Bruce Weber

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