A1 | Heritage | B1 | Manhattan Skyline |
A2 | Feel the Fire | B2 | My Wish for You |
A3 | Disco Dancing | B3 | Wind and the Sea |
スタンリー・タレンタイン。
ジョン・コルトレーンやソニー・ロリンズが大人気のわが国では、まるっきり人気のないテナー・マンです。
ところが本国アメリカではたいへんな人気だそうで、コルトレーンやロリンズよりも、格やギャラがずっと上なのだとか。
このあたりから、日米ジャズ・ファンの気質の違いがちょっぴり見えてきますね。
思うに日本のジャズ・ファンは、真面目なジャズメンが好きなのでしょう。真面目といっても面白味がないという意味ではなくて、ジャズに対してひたむきな、求道者のようなジャズメン。
それゆえファンに媚びたような企画であったり、ポピュラー音楽に歩み寄ったり、まあ今風に言うならセルアウトというのかな、そういった態度でアルバムを売り出すと、たちまちソッポ向かれてしまうのです。
タレンタインはすでに拙ブログで紹介した通り、アースにすり寄った"Tender Togetherness"とか、スティーヴィーににじり寄った"Wonderland"など、まるで日本のジャズ・ファンに「オレのこと嫌いになって下さい」と言わんばかりのアルバムを発表しています。
当然ながらこれらの作品は、わが国では黙殺されました。
もっともタレンタインにとっちゃ本国アメリカで大ウケして、ガッポリ儲かればそれでいいのでょう。極東の小国でどう思われようと、知ったこっちゃない。カエルの面にションベンです。
そうそう、この「大金を稼ぐ」という行為も、日本のジャズ・ファンには許し難いことらしいですよ。
拙ブログではこれまでに何度となく、「ジャズでは食えない」と申し上げて参りました。でもジャズメンは何も好き好んで貧窮しているわけではなくて、できることなら金持ちになりたい、冷暖房完備の高級車に乗りたい、思う存分コカインを貪りたい、プール付きの豪邸に住みたいなどと思っているはず。
そりゃそうですよね。誰がビンボーしたくて、毎日々々一生懸命楽器の練習するかっての。
ところが金銭的成功に対して、日本のジャズ・ファンの冷たいこと冷たいこと。
牛乳配達をして糊口をしのいだウェス・モンゴメリーを持ち上げながら、イージー・リスニング路線に走ったウェスをくさしたりするでしょ。
本道のジャズそのものだけでは大金を稼ぎ出せないことに絶望し、ビッグ・マネーのうごめく他のジャンルに接近を試みたジャズメンは少なくありませんでした。
んで、そのほとんどはスイングジャーナル誌でメッタ斬りにされてしまうんだな。それを読んだ純朴なジャズ・ファンが、「金儲けはけしからん!」となるわけ。
お金を儲けちゃいけないのですか。教えてくれよサンデル教授。
ジャズメンが裕福になることに対し、どうしてかくも日本のジャズ・ファンは不寛容なのでしょうか。
理由のひとつは、小学校の教科書に田中正造を載せてしまったことですかね。教育の場で、ちり紙に終わった彼の人生を称揚することが、金儲けに対する負のイメージを定着させてしまったのではないかと。いやあ、罪な男だぜ正造。(ちなみに私の住む北関東では、ほんまもんの英雄でっせ正造は)
78年の本作は、タレンタインがディスコ音楽の波に乗ろうと画策したもの。当時は『サタデー・ナイト・フィーバー』が大流行していましたからね。さっそく便乗してますよ。このフットワークの軽さ。音楽界の風見鶏や。
日本のジャズ・ファンに承認してもらおうなんて、これっぽっちも考えていません。というか、そもそも日本のマーケットなんて眼中になかったでしょう。
同時期のソニー・スティットが、日本人の、日本人による、日本人のための企画に引き回されていたのと対照的ですなあ。
A3のタイトルがこのアルバムを端的に表しています。ターゲットはディスコ関係者。フロアでかけてほしい、かけてちょーだい、という熱望が迸っています。
そういや、似たようなタイトルの曲がテイスト・オブ・ハニーにもありましたね。込められた願いがいっしょなのは言わずもがな。
SNFのサントラにあったインスト・ナンバーをカバーしたのがB1。おなじみのあの曲も、タレンタインにかかるとトラック野郎の運転席で流れる演歌のようなテイストになってしまいます。
私のお気に入りはA2。これは元々、ピーボ・ブライソンの曲です。オリジナル・バージョンは本作のちょっと前に、そこそこヒットしていました。
流行歌をすかさずカバーするのは、ソウル・ジャズの人にありがちなこと。こういう姿勢も、日本のジャズ・ファンには好ましからぬものに映るんだろうなあ。
サックス界の巨人が、ポッと出のソウル・シンガーが書いた炎のバラードを、ゴージャスなオーケストラを動員して荒々しく吹き散らかします。原曲のもつ、美しくもロマンティックな官能体験を、テンダーかつワンダーなタレンタイン・バーナーでじっくりと焼き上げました。
自らのリソースを駆使して、才能ある若者を世間に知らしめたのです。
当時、ようやく芽が出始めたピーボにとって、これは願ってもない援護射撃になったことでしょう。
ジョン・コルトレーンやソニー・ロリンズが大人気のわが国では、まるっきり人気のないテナー・マンです。
ところが本国アメリカではたいへんな人気だそうで、コルトレーンやロリンズよりも、格やギャラがずっと上なのだとか。
このあたりから、日米ジャズ・ファンの気質の違いがちょっぴり見えてきますね。
思うに日本のジャズ・ファンは、真面目なジャズメンが好きなのでしょう。真面目といっても面白味がないという意味ではなくて、ジャズに対してひたむきな、求道者のようなジャズメン。
それゆえファンに媚びたような企画であったり、ポピュラー音楽に歩み寄ったり、まあ今風に言うならセルアウトというのかな、そういった態度でアルバムを売り出すと、たちまちソッポ向かれてしまうのです。
タレンタインはすでに拙ブログで紹介した通り、アースにすり寄った"Tender Togetherness"とか、スティーヴィーににじり寄った"Wonderland"など、まるで日本のジャズ・ファンに「オレのこと嫌いになって下さい」と言わんばかりのアルバムを発表しています。
当然ながらこれらの作品は、わが国では黙殺されました。
もっともタレンタインにとっちゃ本国アメリカで大ウケして、ガッポリ儲かればそれでいいのでょう。極東の小国でどう思われようと、知ったこっちゃない。カエルの面にションベンです。
そうそう、この「大金を稼ぐ」という行為も、日本のジャズ・ファンには許し難いことらしいですよ。
拙ブログではこれまでに何度となく、「ジャズでは食えない」と申し上げて参りました。でもジャズメンは何も好き好んで貧窮しているわけではなくて、できることなら金持ちになりたい、冷暖房完備の高級車に乗りたい、思う存分コカインを貪りたい、プール付きの豪邸に住みたいなどと思っているはず。
そりゃそうですよね。誰がビンボーしたくて、毎日々々一生懸命楽器の練習するかっての。
ところが金銭的成功に対して、日本のジャズ・ファンの冷たいこと冷たいこと。
牛乳配達をして糊口をしのいだウェス・モンゴメリーを持ち上げながら、イージー・リスニング路線に走ったウェスをくさしたりするでしょ。
本道のジャズそのものだけでは大金を稼ぎ出せないことに絶望し、ビッグ・マネーのうごめく他のジャンルに接近を試みたジャズメンは少なくありませんでした。
んで、そのほとんどはスイングジャーナル誌でメッタ斬りにされてしまうんだな。それを読んだ純朴なジャズ・ファンが、「金儲けはけしからん!」となるわけ。
お金を儲けちゃいけないのですか。教えてくれよサンデル教授。
ジャズメンが裕福になることに対し、どうしてかくも日本のジャズ・ファンは不寛容なのでしょうか。
理由のひとつは、小学校の教科書に田中正造を載せてしまったことですかね。教育の場で、ちり紙に終わった彼の人生を称揚することが、金儲けに対する負のイメージを定着させてしまったのではないかと。いやあ、罪な男だぜ正造。(ちなみに私の住む北関東では、ほんまもんの英雄でっせ正造は)
78年の本作は、タレンタインがディスコ音楽の波に乗ろうと画策したもの。当時は『サタデー・ナイト・フィーバー』が大流行していましたからね。さっそく便乗してますよ。このフットワークの軽さ。音楽界の風見鶏や。
日本のジャズ・ファンに承認してもらおうなんて、これっぽっちも考えていません。というか、そもそも日本のマーケットなんて眼中になかったでしょう。
同時期のソニー・スティットが、日本人の、日本人による、日本人のための企画に引き回されていたのと対照的ですなあ。
A3のタイトルがこのアルバムを端的に表しています。ターゲットはディスコ関係者。フロアでかけてほしい、かけてちょーだい、という熱望が迸っています。
そういや、似たようなタイトルの曲がテイスト・オブ・ハニーにもありましたね。込められた願いがいっしょなのは言わずもがな。
SNFのサントラにあったインスト・ナンバーをカバーしたのがB1。おなじみのあの曲も、タレンタインにかかるとトラック野郎の運転席で流れる演歌のようなテイストになってしまいます。
私のお気に入りはA2。これは元々、ピーボ・ブライソンの曲です。オリジナル・バージョンは本作のちょっと前に、そこそこヒットしていました。
流行歌をすかさずカバーするのは、ソウル・ジャズの人にありがちなこと。こういう姿勢も、日本のジャズ・ファンには好ましからぬものに映るんだろうなあ。
サックス界の巨人が、ポッと出のソウル・シンガーが書いた炎のバラードを、ゴージャスなオーケストラを動員して荒々しく吹き散らかします。原曲のもつ、美しくもロマンティックな官能体験を、テンダーかつワンダーなタレンタイン・バーナーでじっくりと焼き上げました。
自らのリソースを駆使して、才能ある若者を世間に知らしめたのです。
当時、ようやく芽が出始めたピーボにとって、これは願ってもない援護射撃になったことでしょう。
★★★ | 採点表を見る |
Produced by Stanley Turrentine
Arranged and Conducted by Richie Rome
Stanley Turrentine: Tenor Sax
Richie Rome: Keyboards
Greg Poree, Ronnie James: Electric Guitars
Greg Middleton: Electric Bass
Quentin Dennard: Drums
Shondu Akiem: Percussion
Barbara Ingram, Carla Benson, Yvette Benton: Background Vocals
Don Renaldo: Concertmaster
Recording and Remix Engineer: Steve Smith
Assistant Recording Engineer: Fred Galletti
Assistant Remix Engineer: Phil Shrago
Mastering: Tom Coyne
Recorded at Alpha International Studios, Philadelphia (June - July 1978)
Remixed at Media Sound, New York City
Mastered at Frankford / Wayne, New York City
Production Coordinator: Richard Carpenter
Art Direction: Phil Carroll
Photography: Jim Houghton
Design: Dennis Gassner
Arranged and Conducted by Richie Rome
Stanley Turrentine: Tenor Sax
Richie Rome: Keyboards
Greg Poree, Ronnie James: Electric Guitars
Greg Middleton: Electric Bass
Quentin Dennard: Drums
Shondu Akiem: Percussion
Barbara Ingram, Carla Benson, Yvette Benton: Background Vocals
Don Renaldo: Concertmaster
Recording and Remix Engineer: Steve Smith
Assistant Recording Engineer: Fred Galletti
Assistant Remix Engineer: Phil Shrago
Mastering: Tom Coyne
Recorded at Alpha International Studios, Philadelphia (June - July 1978)
Remixed at Media Sound, New York City
Mastered at Frankford / Wayne, New York City
Production Coordinator: Richard Carpenter
Art Direction: Phil Carroll
Photography: Jim Houghton
Design: Dennis Gassner
0 件のコメント:
コメントを投稿