ソニー・スティット / ヴァーモントの月
A1 | West 46th Street 西46ストリート | B1 | It Might as Well Be Spring 春の如く |
A2 | Who Can I Turn to? フー・キャン・アイ・ターン・トゥ | B2 | Constellation コンステレイション |
A3 | Moonlight in Vermont ヴァーモントの月 | B3 | Blues for PCM ブルース・フォー・PCM |
A4 | Flight Cap Blues フライト・キャップ・ブルース |
ソニー・スティットは一時期、アルト・サックスを吹かず、テナー・サックスばかりを吹いていたらしい。
その理由が、チャーリー・パーカーのそっくりさんと言われるのがイヤだったからなのだそうな。まったくつまんない意地を張ったもんだ。
チャーリー・パーカーの影響をキョーレツに受けた、とされるフィル・ウッズやジャッキー・マクリーンのアルト・サックスを聴いても、パーカーのようにはまったく聞こえません。どう聴いても別人です。彼らがパーカーのそっくりさんになるのは、おそらく不可能です。まあ彼らもパーカーになろうなんて夢にも思わんでしょうし。
ところがスティットには、パーカーに聞こえる瞬間がけっこうあったりします。
パーカーのように吹く、という困難きわまる挑戦で、驚くほどの善戦をしているのです。これは誰にでもできる芸当ではありません。アルト・サックス奏者の上位1%の世界ではないのか。トップガンですよ。もっと胸を張っていいと思います。
ただしアーティストにとって、「第二の○○○」とか「○○○のぱちもん」「○○○の二番煎じ」と言われるのは、やはり面白くないのでしょう。
20年ほど前、宇多田ヒカルが飛ぶように売れていた頃、倉木麻衣という宇多田のエピゴーネンが登場しました。
ぱちもんなのは明々白々なのに、世間がそういうラベルを貼ることに対して、当事者たちは神経症的なまでに反発しました。そんなにムキにならなくても…。図星だったんか?
まあさすがに「宇多田ファンのみなさん、私のCDも聴いてね」なんて口が裂けても言えないでしょうけど。
ともあれスティットはアーティストの矜持から、サックスをアルトからテナーに持ち替えました。
これがまたいいんだ。テナー専業でもかなりいけます。やがて50年代の後半にはアルト・サックスを解禁し、それ以後はアルトとテナーをだいたい同じくらいの頻度で吹くようになりました。
本作が吹き込まれた70年代には、スティットはあちこちのレーベルに、かなりの数のレコーディングを残しています。
当時のクロスオーヴァーやフュージョン人気の陰で、ストレートアヘッドなジャズを好むマイノリティ向けのニッチな仕事をこなしていたのでしょう。
出来のいいとき、そうでないとき、波はあったようで、前者のうちいくつかは名盤とされています。
で、本作はどうかと言うと、残念ながら名盤ガイドに掲載されるようなものではありません。
ノリノリの絶好調でもなく、目も当てられないほどの不調でもなく、仕事と割り切って「流した」わけでもない。
A1「西46ストリート」のイントロのドラムロールがエドウィン・スターの「黒い戦争」にソックリで、あやうくジャッキー・チェンと歌いそうになります。
なお、オーディオテクニカルな見方をするなら、このレコードはPCMという、デジタル録音の新しい技術の叩き台です。
CDが産声を上げる80年代より少し前、70年代後半には、のちにCD規格の根幹をなすさまざまな技術が考案され、トライアル&エラーが日夜繰り返されていました。その先頭を走っていたのが日本企業です。日本企業が世界にスタンダードを示したのです。
今よりはるかに「クール・ジャパン」だったわけ。
黒人を差別せず、ジャズを尊敬し、ギャラ払いのいい日本から依頼されたこの仕事は、スティットにとっても好ましいものだったに違いありません。 自作のブルースに「ブルース・フォー・PCM」なんてタイトルつけるくらいだもんね。
その理由が、チャーリー・パーカーのそっくりさんと言われるのがイヤだったからなのだそうな。まったくつまんない意地を張ったもんだ。
チャーリー・パーカーの影響をキョーレツに受けた、とされるフィル・ウッズやジャッキー・マクリーンのアルト・サックスを聴いても、パーカーのようにはまったく聞こえません。どう聴いても別人です。彼らがパーカーのそっくりさんになるのは、おそらく不可能です。まあ彼らもパーカーになろうなんて夢にも思わんでしょうし。
ところがスティットには、パーカーに聞こえる瞬間がけっこうあったりします。
パーカーのように吹く、という困難きわまる挑戦で、驚くほどの善戦をしているのです。これは誰にでもできる芸当ではありません。アルト・サックス奏者の上位1%の世界ではないのか。トップガンですよ。もっと胸を張っていいと思います。
ただしアーティストにとって、「第二の○○○」とか「○○○のぱちもん」「○○○の二番煎じ」と言われるのは、やはり面白くないのでしょう。
20年ほど前、宇多田ヒカルが飛ぶように売れていた頃、倉木麻衣という宇多田のエピゴーネンが登場しました。
ぱちもんなのは明々白々なのに、世間がそういうラベルを貼ることに対して、当事者たちは神経症的なまでに反発しました。そんなにムキにならなくても…。図星だったんか?
まあさすがに「宇多田ファンのみなさん、私のCDも聴いてね」なんて口が裂けても言えないでしょうけど。
ともあれスティットはアーティストの矜持から、サックスをアルトからテナーに持ち替えました。
これがまたいいんだ。テナー専業でもかなりいけます。やがて50年代の後半にはアルト・サックスを解禁し、それ以後はアルトとテナーをだいたい同じくらいの頻度で吹くようになりました。
本作が吹き込まれた70年代には、スティットはあちこちのレーベルに、かなりの数のレコーディングを残しています。
当時のクロスオーヴァーやフュージョン人気の陰で、ストレートアヘッドなジャズを好むマイノリティ向けのニッチな仕事をこなしていたのでしょう。
出来のいいとき、そうでないとき、波はあったようで、前者のうちいくつかは名盤とされています。
で、本作はどうかと言うと、残念ながら名盤ガイドに掲載されるようなものではありません。
ノリノリの絶好調でもなく、目も当てられないほどの不調でもなく、仕事と割り切って「流した」わけでもない。
A1「西46ストリート」のイントロのドラムロールがエドウィン・スターの「黒い戦争」にソックリで、あやうくジャッキー・チェンと歌いそうになります。
なお、オーディオテクニカルな見方をするなら、このレコードはPCMという、デジタル録音の新しい技術の叩き台です。
CDが産声を上げる80年代より少し前、70年代後半には、のちにCD規格の根幹をなすさまざまな技術が考案され、トライアル&エラーが日夜繰り返されていました。その先頭を走っていたのが日本企業です。日本企業が世界にスタンダードを示したのです。
今よりはるかに「クール・ジャパン」だったわけ。
黒人を差別せず、ジャズを尊敬し、ギャラ払いのいい日本から依頼されたこの仕事は、スティットにとっても好ましいものだったに違いありません。 自作のブルースに「ブルース・フォー・PCM」なんてタイトルつけるくらいだもんね。
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Personnel
Sonny Stitt: Alto & Tenor Saxophone
Barry Harris: Piano
Reggie Workman: Bass
Tony Williams: Drums
Walter Davis: Piano on A4
Recorded at Sound Ideas Studios, New York City, November 25, 1977
Producer: Yoshio Ozawa
A&R Director: Reginald Workman
Program Coordinator: Tsutomu Ueno
Engineer: Jim McCurdy
PCM Engineer: Takeaki Anazawa, Kaoru Yamamoto
Cover Photo: Tadayuki Naitoh (Front), Tsutomu Ueno (Back)
Cover Design: Sign
Liner Photo: Tsutomu Ueno
Phototype: Mok
Sonny Stitt: Alto & Tenor Saxophone
Barry Harris: Piano
Reggie Workman: Bass
Tony Williams: Drums
Walter Davis: Piano on A4
Recorded at Sound Ideas Studios, New York City, November 25, 1977
Producer: Yoshio Ozawa
A&R Director: Reginald Workman
Program Coordinator: Tsutomu Ueno
Engineer: Jim McCurdy
PCM Engineer: Takeaki Anazawa, Kaoru Yamamoto
Cover Photo: Tadayuki Naitoh (Front), Tsutomu Ueno (Back)
Cover Design: Sign
Liner Photo: Tsutomu Ueno
Phototype: Mok
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