新聞によりますと
| A1 | Smackwater Jack | B1 | Theme From "The Anderson Tapes" |
| A2 | Cast Your Fate to the Wind | B2 | Brown Ballad |
| A3 | Ironside | B3 | Hikky-Burr |
| A4 | What's Going On? | B4 | Guitar Blues Odyssey: From Roots to Fruits |
のっけのA1で、びっしびし気合いの入ったイントロに導かれて現れたのは、脱力気味のリード・ヴォーカル。
アルバム冒頭から、いきなり膝カックンですよ。
誰なんだよ歌っているのは?とクレジットを見たら、クインシー本人でした。
本作ではA1とA4で、クインシーがひょろっちいヴォーカルを聴かせてくれます。
ぐえー何この歌いっぷりクソじゃん、と斬り伏せる前に、ちょっと立ち止まってみましょう。
音楽を熟知し、偉大な歌い手たちとたくさん仕事をしてきたクインシーです。
自分のヴォーカルが「ナンボのもんか」、わからないはずがないじゃないですか。
その気になればシナトラだって呼べたであろうクインシーなら、どんなヴォーカリストだって起用できたでしょう。
それでもなお、プロデューサーの立場から、このトラックに必要なピースはオレなんだと、オレの歌声で完成するのだと、そう確信したのです。
製品の品質、仕上がりに責任を負うプロデューサーの職務を知悉しているクインシーが、他を差し置いて自分でマイクを握っちゃいました。それもへろへろの声で。
アルバムの出来をわやにしかねない、危険な綱渡りです。その理由を知りたい。なぜ歌ったのか。いったいどうして?
私はこう考えます。
もしここで上手な歌手を登用してレコーディングをそつなく済ませていたら、印象の薄いアルバムになってしまったかもしれません。
ところがクインシーが自ら歌うことで、アルバムに「ささくれ」が生じた。リスナーの心には、こういうのが引っかかるんですよね。
すべてのトラックを上質に、無難にまとめることは、クインシーだったら当然できますよ。
でも優等生みたいなアルバムだと、すぐに忘れ去られてしまう、ってことあるじゃないですか。そこでアルバムにあえて隙をこしらえた。それがへろへろの声。
欠点のない整形美人って、あんまり魅力的でなかったりしますよね。何かしらクセのある顔の方に、惹かれてしまったりするものです。
音楽だってきっとそう。
クインシーが全米からかき集めたミュージシャンたちなら、悪かろうはずがない。
彼らに演奏させれば、それなりのクオリティに着地するのは目に見えています。
それが納得できなかったのではないかな。予定調和みたいなの。
なので、ぶち壊したると。オレの歌声でメチャクチャにしてやると。いやあ、パンクですなあ。
もちろん衝動のまま破壊したというよりは、プロデューサーとして計算の上だったと思う。
あえてパーフェクトにしないこと。これを実現する上で、うってつけだったのが自分の声だった、そういうことです。
うーん、ちょっと考えすぎですかね。
現実はもっとシンプルで、クインシーがただただ歌いたかった、それだけなのかも。
インストゥルメンタリストには、じつは歌いたい人が多い。
例えば本作に参加しているミュージシャンでも、ミルト・ジャクソン、ジョー・ベック、ジミー・スミス、モンティ・アレキサンダー、グラディ・テイトは歌っちゃった人たち。それも内輪で、余芸で歌ったとかではなく、きっちり商業作品としてリリースされ、レコード店に並べられました。売れ行きについては言わずもがな。
そういう先輩たちに触発されて、よーしオレも歌ったる、そう考えたとしても不思議ではありません。
レコーディング現場で、上記の先輩方に「ヘタでもいいんだよ、歌は気持ちだよ」とかそういう無益な励ましがあったのかもしれませんね。
かくしてA&Rスタジオのマイクの前に、今までロクに歌ったことのない素人がのっそりと進み出ました。クインシー・ジョーンズ、38歳の歌手デビュー。
元トランペッター、元バンド・リーダー、元レコード会社役員、コンポーザー、アレンジャー、そしてプロデューサー。たくさんの肩書に、これからは歌手が加わることになるのです。へろへろの声が、米メジャー・レーベルの配給網に乗せられ、全世界のリスナーの鼓膜にまで届けられてしまいました。
これを機に、クインシーは歌うことにのめり込んでいきます。次のアルバムでもへろへろの声でたっぷり歌ってますよ。
きっと松本千夏の「歌って」みたいな境地だったんだろうなあ。
アルバム冒頭から、いきなり膝カックンですよ。
誰なんだよ歌っているのは?とクレジットを見たら、クインシー本人でした。
本作ではA1とA4で、クインシーがひょろっちいヴォーカルを聴かせてくれます。
ぐえー何この歌いっぷりクソじゃん、と斬り伏せる前に、ちょっと立ち止まってみましょう。
音楽を熟知し、偉大な歌い手たちとたくさん仕事をしてきたクインシーです。
自分のヴォーカルが「ナンボのもんか」、わからないはずがないじゃないですか。
その気になればシナトラだって呼べたであろうクインシーなら、どんなヴォーカリストだって起用できたでしょう。
それでもなお、プロデューサーの立場から、このトラックに必要なピースはオレなんだと、オレの歌声で完成するのだと、そう確信したのです。
製品の品質、仕上がりに責任を負うプロデューサーの職務を知悉しているクインシーが、他を差し置いて自分でマイクを握っちゃいました。それもへろへろの声で。
アルバムの出来をわやにしかねない、危険な綱渡りです。その理由を知りたい。なぜ歌ったのか。いったいどうして?
私はこう考えます。
もしここで上手な歌手を登用してレコーディングをそつなく済ませていたら、印象の薄いアルバムになってしまったかもしれません。
ところがクインシーが自ら歌うことで、アルバムに「ささくれ」が生じた。リスナーの心には、こういうのが引っかかるんですよね。
すべてのトラックを上質に、無難にまとめることは、クインシーだったら当然できますよ。
でも優等生みたいなアルバムだと、すぐに忘れ去られてしまう、ってことあるじゃないですか。そこでアルバムにあえて隙をこしらえた。それがへろへろの声。
欠点のない整形美人って、あんまり魅力的でなかったりしますよね。何かしらクセのある顔の方に、惹かれてしまったりするものです。
音楽だってきっとそう。
クインシーが全米からかき集めたミュージシャンたちなら、悪かろうはずがない。
彼らに演奏させれば、それなりのクオリティに着地するのは目に見えています。
それが納得できなかったのではないかな。予定調和みたいなの。
なので、ぶち壊したると。オレの歌声でメチャクチャにしてやると。いやあ、パンクですなあ。
もちろん衝動のまま破壊したというよりは、プロデューサーとして計算の上だったと思う。
あえてパーフェクトにしないこと。これを実現する上で、うってつけだったのが自分の声だった、そういうことです。
うーん、ちょっと考えすぎですかね。
現実はもっとシンプルで、クインシーがただただ歌いたかった、それだけなのかも。
インストゥルメンタリストには、じつは歌いたい人が多い。
例えば本作に参加しているミュージシャンでも、ミルト・ジャクソン、ジョー・ベック、ジミー・スミス、モンティ・アレキサンダー、グラディ・テイトは歌っちゃった人たち。それも内輪で、余芸で歌ったとかではなく、きっちり商業作品としてリリースされ、レコード店に並べられました。売れ行きについては言わずもがな。
そういう先輩たちに触発されて、よーしオレも歌ったる、そう考えたとしても不思議ではありません。
レコーディング現場で、上記の先輩方に「ヘタでもいいんだよ、歌は気持ちだよ」とかそういう無益な励ましがあったのかもしれませんね。
かくしてA&Rスタジオのマイクの前に、今までロクに歌ったことのない素人がのっそりと進み出ました。クインシー・ジョーンズ、38歳の歌手デビュー。
元トランペッター、元バンド・リーダー、元レコード会社役員、コンポーザー、アレンジャー、そしてプロデューサー。たくさんの肩書に、これからは歌手が加わることになるのです。へろへろの声が、米メジャー・レーベルの配給網に乗せられ、全世界のリスナーの鼓膜にまで届けられてしまいました。
これを機に、クインシーは歌うことにのめり込んでいきます。次のアルバムでもへろへろの声でたっぷり歌ってますよ。
きっと松本千夏の「歌って」みたいな境地だったんだろうなあ。
| ★★★ | 採点表を見る |
Produced by Quincy Jones, Ray Brown and Phil Ramone
Recording Engineers: Phil Ramone Assisted by John Curcio, Tommy Vicari and George Clabin (Sound Ideas Studio)
Recorded at A&R Studios, New York City
All Selections Arranged and Conducted by Quincy Jones Except B1 Arranged by Quincy Jones and Marty Paich
Creative Direction by Roland Young
Album Concept and Design by Craig Braun, Inc. Jackets Mf'd by Sound Packaging Corp.
Photography by Jim McCrary
Woods: Jerome Richardson (Soprano Sax & Tenor Sax), Hubert Laws (Flutes & Tenor Sax), Peter Christlieb (Tenor Sax)
Trumpets and Flugelhorns: Ernest Royal, Eugene Young, Marvin Stamm, Joe Newman, Buddy Childers, Freddie Hubbard
Trombones: Wayne Andre (Tenor), Garnett Brown (Tenor), Dick Hixon (Bass), Alan Raph (Bass), Tony Studd (Bass)
Guitars: Toots Thielmans (Harmonica & Guitar), Eric Gale, Jim Hall, Joe Beck, Arthur Adams, Freddie Robinson
Drums & Percussion: Grady Tate (Drums), Paul Humphries (Drums), Larry Bunker (Percussion), George Devens (Percussion)
Keyboards: Bobby Scott (Piano), Bob James (Fender Rhodes Piano), Jakie Byard (Fender Piano), Monty Alexander (Tack Piano), Joe Sample (Fender Piano), Jimmy Smith (Organ), Dick Hyman (Electric Harpsichord & Piano)
Moog Synthesizer: Paul Beaver, Edd Kalehoff
Bass: Ray Brown (String), Chuck Rainey (Fender), Bob Crenshaw (String), Carole Kaye (Fender)
Miscellaneous: Milt Jackson (Vibes), Harry Lookofsky (Violins)
Vocal Groups for A1 and A4: Valerie Simpson, Marethe Steward, Marilyn Jackson, Barbara Massey, Joshie Armstead
Recording Engineers: Phil Ramone Assisted by John Curcio, Tommy Vicari and George Clabin (Sound Ideas Studio)
Recorded at A&R Studios, New York City
All Selections Arranged and Conducted by Quincy Jones Except B1 Arranged by Quincy Jones and Marty Paich
Creative Direction by Roland Young
Album Concept and Design by Craig Braun, Inc. Jackets Mf'd by Sound Packaging Corp.
Photography by Jim McCrary
Woods: Jerome Richardson (Soprano Sax & Tenor Sax), Hubert Laws (Flutes & Tenor Sax), Peter Christlieb (Tenor Sax)
Trumpets and Flugelhorns: Ernest Royal, Eugene Young, Marvin Stamm, Joe Newman, Buddy Childers, Freddie Hubbard
Trombones: Wayne Andre (Tenor), Garnett Brown (Tenor), Dick Hixon (Bass), Alan Raph (Bass), Tony Studd (Bass)
Guitars: Toots Thielmans (Harmonica & Guitar), Eric Gale, Jim Hall, Joe Beck, Arthur Adams, Freddie Robinson
Drums & Percussion: Grady Tate (Drums), Paul Humphries (Drums), Larry Bunker (Percussion), George Devens (Percussion)
Keyboards: Bobby Scott (Piano), Bob James (Fender Rhodes Piano), Jakie Byard (Fender Piano), Monty Alexander (Tack Piano), Joe Sample (Fender Piano), Jimmy Smith (Organ), Dick Hyman (Electric Harpsichord & Piano)
Moog Synthesizer: Paul Beaver, Edd Kalehoff
Bass: Ray Brown (String), Chuck Rainey (Fender), Bob Crenshaw (String), Carole Kaye (Fender)
Miscellaneous: Milt Jackson (Vibes), Harry Lookofsky (Violins)
Vocal Groups for A1 and A4: Valerie Simpson, Marethe Steward, Marilyn Jackson, Barbara Massey, Joshie Armstead
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