2024/04/18

Diana Ross / Touch Me in the Morning ('73)

A1Touch Me in the MorningB1Little Girl Blue
A2All of My LifeB2My Baby (My Baby My Own)
A3We Need YouB3Imagine
A4Leave a Little RoomB4Brown Baby / Save the Children
A5I Won't Last a Day Without You
 モータウンのシンデレラ、ダイアナ・ロスが一本独鈷となって4作目のアルバム。

「この薄汚ねえシンデレラ」と罵りたくなるような、あちこちに茶ばみのあるジャケット。何の汚れなんだこれ。まさにダーティー・ダイアナ。いったい前のオーナーは、どのように扱っていたのでしょうか。
 それゆえ安価で叩き売られ、おかげさまで私の手元に転がってきたのであります。
 なお本作はかなりのタマ数が中古レコード市場を回遊しているので、コンディション良好のシロモノでもけっこう安く買えるはず。狙っている人は私のような妥協をせず、粘って良盤を探しましょう。

 曲毎にプロデューサーが違うのは、モータウン内の各チームがダイアナの長所を引き出そうと競っていたから。レーベル内で彼らは常に、激しいチーム対抗戦をくり広げ、切った張ったの生存競争にさらされていました。プロデューサーそれぞれがライバル意識をむき出しに火花バチバチ散らしたせいで、ノリにノッていた当時のダイアナのうま味成分が、どの曲にもたっぷり入っています。競争がなければいいモノは生まれない、というのは本当なんですね。

 就中、アルバム・タイトルにもなったA1はダイアナ・ロス指折りの名曲。ビルボードのホット100で1位になりました。
「サヨナラ代わりに1発やっていかんかい」という別れの歌。作者のマイケル・マッサーは株屋でボロ儲けしていたのに、夢を諦めきれず音楽業界に入った人です。カネよりも夢を選んだ彼だからこそ、こんなにも前向きな別れの歌を作れたのではないかな。

 A5はカーペンターズの有名曲。白人中産階級のマーケットに乗り込んだる!というモータウンの野望を一身に集め、ダイアナが最前線に立たされました。
 ダイアナという切り札を手にした当時のモータウンは、それだけ鼻息が荒かったということ。それにしても、カーペンターズと同じ土俵に上がることを余儀なくされたダイアナ、ちょっとかわいそうですね。
 両方を聴き比べれば、おそらく100人中100人が、カレン・カーペンターに軍配を上げるでしょう。これはさすがに相手が悪いとしか言いようがない。ダイアナはよくがんばったと思いますよ。

 B1はもともとロジャース&ハートのミュージカル・ナンバーで、私のお気に入りスタンダードでもあります。
 ネタ元は『ジャンボ』という、サーカスを舞台にしたミュージカル。60年代にドリス・デイ主演で映画化されました。映画の方はたしか、30年くらい前にテレビ東京・午後のロードショー枠で放映されたことあります。
 あの「リトル・ガール・ブルー」が聴けるぞ楽しみだあ…とブラウン管の前で今か今かと待っていたのに、あれれ、いつになっても流れません。そのまま放映時間が終了してしまいました。げえっ、まさかのカットかよ。いちばんの名曲をカットしてどうするんだよテレ東!
 映画本編は2時間超の長さゆえ、正味90分程度の午後ロー枠に押し込むため無茶なカットを敢行したようです。テレ東の担当者も、場面の取捨選択にはさぞや四苦八苦したんだろうなあ。

 そういえば昔、午後ローで『バラバ』を見てたら、バラバの相棒がいつの間にかいなくなっていて、しかもその説明が一切ないという謎状況に陥ったことあります。
 何せ『バラバ』は2時間半近い長編ですからね。それを午後ローで放映するなんて、スーツケースに人間を詰め込むような暴挙です。「ならできないじゃない!」とテレ東担当者も絶叫したに違いない。そりゃ相棒も蒸発するって。

 テレ東の肩を持つなら、午後ロー名物のカットしまくり、これって悪いことばかりではなくて、冗長な映画がテンポよくなったりすることも(ごくまれに)あります。「映画作品は監督のもの」とか「勝手に編集されない権利」だとか堅苦しいことはこの際いさぎよく忘れて、テレ東の編集職人によって生まれ変わった作品を楽しみましょう。
★★★

A1 Produced by Michael Masser, Tom Baird
A2, A4 Produced by Michael Randall
A3 Produced by Deke Richards
A5 Produced by Mel Larson, Jerry Marcellino
B1 Produced by Gil Askey
B2 Produced by Tom Baird
B3 Produced by Diana Ross
B4 Produced by Tom Baird / Diana Ross

Executive Producer: Berry Gordy

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