2022/07/05

Livingston Taylor / Man's Best Friend ('80)

リビングストン・テイラー / ベスト・フレンド
A1Ready Set Go
レディ・セット・ゴー
B1Dancing in the Streets
ダンシング・イン・ザ・ストリート
A2Dance With Me
ダンス・ウィズ・ミー
B2Out of This World
アウト・オブ・ジス・ワールド
A3First Time Love
ファースト・タイム・ラヴ
B3Face Like Dog
フェイス・ライク・ドッグ
A4Sunshine Girl
サンシャイン・ガール
B4Pajamas
パジャマ
A5You Don't Have To Choose
ユー・ドント・ハヴ・トゥ・チューズ
B5Marie
マリー
 かつて人類の祖先は、狼を飼いならして狩猟の手伝いをさせていたそうです。太古の昔から、犬は人類の相棒であったわけ。
 そういや、かの有名な『ウルビーノのヴィーナス』にも、犬が侍っていましたよね。

 レコード・ジャケットの被写体としても、犬は恰好の素材でありました。洋の東西を問わず、これまでにたくさんの名ジャケットが生み出されてきたのです。
 しかし私のレコード棚にはあんまりなかった。キャプテン&テニールの『愛ある限り』とか、バリー・マニロウの『フィーリング』の裏側とか、そんなもん。

 本作のジャケは表情の乏しい人間と、ちょっと嬉しそうな顔をした犬が並んでいます。
 この「嬉しそうな犬」というのが、心をくすぐるんですよね。

 犬は喜怒哀楽をストレートに表現します。駆け引きとか、変化球とか、そんなもんありまへん。とにかくまっすぐなのです。
 私を含む犬好きな人々は、おそらくそのあたりに魅了されるのではないでしょうか。
 だから犬が嬉しそうにしていると、自分もたまらなく嬉しくなるのです。

 狩猟の手伝いなどで、単に「役に立つ」というだけなら、犬は"Man's Best Friend"になれんかったのではないかなあ。

 シンガー・ソングライターのリヴィングストン・テイラーは、ジェームス・テイラーの弟です。
 スーパースターである偉大な兄の陰に隠れるかのように、地味に、地道に音楽活動をしています。ただし、同じような境遇のスコット・ジャレットよりも、ずっと恵まれたミュージシャン人生を歩んでいることは間違いないでしょう。アルバムを何枚も出してますからね。

 前作『三面鏡』のリヴは、言うなれば授業の休み時間に教室の片隅でひとり、本を読んでいるリヴ。そして本作のリヴは、例えるなら生徒会長に立候補したリヴ。
 内向的な性格から脱し、陽性の、ハツラツたる伴奏をしたがえ、前に躍り出てきましたリヴ。

 80年代を迎え、ギンギンなサウンドに変容しなければ音楽界で生き残れない、という危機感は少なからず、あったと思います。多くのアーティストがそうしたわけだし、その選択を否定はできません。

 のっけのA1「レディ・セット・ゴー」から、マチズモ爆発です。前作と違うオラ見てよもう、ってなアピールしたかったのか、"not introspection"(もうモジモジしていられない)なんて歌っちゃってます。

 ジャケット写真を想起させるタイトルのB3は、グレナダを歌ったもの。花売りの娘(売春婦の暗喩)と夜通しカリプソでハッピーずら、というような狂った歌詞です。
 米ソが水面下で綱引きしていた当時のグレナダ情勢について、作者のリヴがどれほど関心あったのか、それはわかりません。ともあれスティール・ドラムが徹頭徹尾鳴りっぱなしでやかましくも異国情緒甚だしく、本作でもっとも印象に残るトラックになっております。

 ハードでタイトできらびやかな80'sポップスに生まれ変わったリヴ。
 悪くないと思います。でもね、私はやっぱり、モジモジと内省的な前作の方が好きです。

 シンガー・ソングライターなのにカバーがやけに多く、自作曲は半分くらいしかありません。そういう点からも、全曲オリジナルで固めていた前作に軍配。
★★★

A1, A4, A5, B1, B3, B4
Produced by Jeff Baxter for The Entertainment Company
Executive Producer: Charles Koppelman for The Entertainment Company
Recorded at Cherokee Recording Studios, Los Angeles, CA
Engineers: Bruce Robb and Larry Rebhun

A2, A3, B2, B5
Produced by John Boylan
Recorded at Westlake Sound, Los Angeles, CA

Entire Album Mixed at The Record Plant, Los Angeles, CA by Paul Grupp
Assistant Engineers: Phil Jamtaas and Deni King
Recorded June '79 Through March '80
Orchestration: Jimmy Haskell
Concert Master: Sid Sharp

Photography: Benno Friedman
Design: Nancy Greenberg and Paula Scher

0 件のコメント: