2022/06/20

Chet Atkins, C. G. P. / Stay Tuned ('85)

チェット・アトキンス / アーバン・オアシス
A1Sunrise
サンライズ
B1The Cricket Ballet
ザ・クリケット・バレット
A2Please Stay Tuned
プリーズ・ステイ・テューンド
B2Cosmic Square Dance
コズミック・スクエア・ダンス
A3Quiet Eyes
クワイエット・アイズ
B3The Boot and the Stone
ザ・ブート・アンド・ザ・ストーン
A4A Mouse in the House
ア・マウス・イン・ザ・ハウス
B4Tap Room
タップ・ルーム
A5Some Leather and Lace
サム・レザー・アンド・レイス
B5If I Should Lose You
イフ・アイ・シュド・ルーズ・ユー
 中古レコード店にて本作を手にした瞬間、ピンときました。

 この青いジャケットは、日本のレコード会社が差し替えたものに相違ないと。
 おまけに『アーバン・オアシス』という邦題は、原題や内容とはまるっきり関係のない、日本のレコード会社が勝手にくっつけたものであろうと。

 はたして、この予感は正しかった。大福ほど特別ではないにせよ、長いこと中古レコードに接していると、こういうカンが働くことがあるものです。

 カントリー・ギターの第一人者、チェット・アトキンスのアルバム。
「アーバン」という言葉の対極におわすお方です。しかしカントリー・テイストを前面に押し出してしまうと、日本国内でのセールスは絶望的なまでに困難となります。そこでジャケットを青空に差し替え、アーバン・オアシスというチャラいカタカナ邦題を貼り付けて、カントリーな要素を排除したわけ。

 かような、日本のレコード会社がとった販売戦略を一言で申し上げると、冒涜です。

 いくらジャケットでエア・サプライっぽいペパーミントな偽装をしようとも、しょせん、内容はカントリーです。聴いてしまえばそんなメッキ、たちどころにはげてしまいます。
 こういう所業がまかり通った背景には、買って聴くまでは内容がわからない、というレコード特有の事情がありました。

 インターネット時代の今日なら、CDにせよダウンロードにせよ、試聴をしてから購入するか否かを決められますよね。しかし当時は、ラジオや音楽雑誌などで事前に情報を得られる場合を別にすれば、レコードを購う行為は「エイヤー」だったわけです。

 売ってしまえば、こっちのもの。あとは知らん。まさしく売りっ放し。レコード会社のそういったハリボテ商法も、当時なら可能でした。

 ではそういう状況下でレコードを買っていた、あるいは買わされていた、あの頃のリスナーたちは、はたして不幸だったのでしょうか。
 私はそうは思わない。

 レコードを買うことは、賭けでした。
 イチかバチか。のるかそるか。勝つこともあれば、負けることもある。それを承知の上で、みんな、自らの意思で「張った」のです。

 予備知識なしで買うリスクには、思わぬ良盤と遭遇するリターンがあったわけ。経済的合理性では白黒つけることのできない、夢やロマンや冒険に満ちあふれていました。

 何より肝要なのは、お金をドブに捨てるしくじりでさえ、楽しむ余裕が庶民にもあったということ。

 ひるがえって令和の今、人々は「1円だってムダにするもんか」と括約筋をギュッと締めて日々、生活しています。ドブに捨てるなんてとんでもない。余裕なんてあるわけない。
 音楽にお金なんて使えませんよね。ましてや予備知識のないものなんて。

 そこへサブスクリプションの時代ときた。もはや何が試聴で、何が本聴なのか、両者を隔てる境界線は薄らぎ、消えかかっています。
 ここに至って、こと音楽に関する「エイヤー」は、成り立たなくなってしまいました。

 さて本作、前述の通り内容はカントリーですので、ジャケ買いした勇者たちは討ち死にしたことでしょう。いとあはれ。でもね、ジャンルにこだわりがなければ楽しめるアルバムですよこれ。
 スター・ギタリストたちが寄ってたかって長老チェット・アトキンスを取り囲む企画。共演者はかなり豪華です。
 中には、ダビングで共演したのではないか…と疑わしいトラックもあります。ま、80年代のレコード作りなんてそんなもんでしょう。
 B3のサックス・ソロが何とも牧歌というか。グローヴァー・ワシントン・Jr.やケニー・Gを聴き慣れた耳には、じつに衝撃的なフレーズ。

 ところで、『アーバン・オアシス』なんて呑気に邦題つけちゃっていたのは昔の話。
 今やアメリカでは、urbanという言葉は黒人差別用語に属するのだそうです。

 ちびくろサンボやダッコちゃんと同じように、わが国でも早晩、排斥の圧がかかることになるでしょう。
 アーバンチャンピオンで遊んでいる場合じゃないですぜダンナ。
★★★

Guitars
Chet Atkins
George Benson
Larry Carlton
Earl Klugh
Mark Knopfler
Steve Lukather
Brent Mason
Dean Parks
Paul Yandell

Drums
Mark Hammond
Larrie Londin
Jeff Porcaro

Percussion
Paulinho da Costa
Terry McMillan

Keyboards
Darryl Dybka
Randy Goodrum
Clayton Ivey
Shane Keister

Violin and Fiddle
Mark O'Connor

Sax
Boots Randolph

Bass
David Hungate

Horns
Don Sheffield
James R. Horn

Strings
"A" Strings

Strings and Horns Arranged by Bergen White

Produced by David Hungate
A1 and A4 Produced by Chet Atkins and George Benson

Recorded at
Larry Carlton Studios, L. A.
CA Workshop, Nashville
Sound Shop Studios, Nashville
Engineer: Mike Poston
Engineer on String Sessions: Ernie Winfrey
Remix Engineer: Don Hahn at A&M Recording Studios, L. A.
Assistant Engineer: Joe Borja

Mastered by Bernie Grundman at Bernie Grundman Mastering, L. A.

Special Thanks to Dr. George Butler for Supervising the Remixing of This Album

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