2026/09/02

Frankie Crocker & The Heart and Soul Orchestra ('77)

ユーロ・ディスコを迎撃するアメリカ

A1Love in C MinorB1Midnight Lady
A2September in the RainB2Prisoner of Love
A3My ReverieB3Tuxedo Junction
A4Funkin' Up Hollywood
 フランスが世界に誇るディスコ・アーティスト、セローンの作品をカバーする企画。

 ニューヨークのDJがセローンの新作レコードをかけてみたら、ダンスフロアが爆発せんばかりに盛り上がりました。「これはイケるぞ」と踏んだそのDJが、LAのカサブランカ・レコーズにカバーを委嘱した、そういう経緯らしい。

 セローン聴きたきゃ、セローンを聴けばいいじゃん。どうしてわざわざリメイクするんだよ。そう思いますよね。
 しかし自国にてリメイクするのがアメリカ流なのです。例えば『七人の侍』を見て、ああ面白かった…だけでは終わりません。『荒野の七人』やら『宇宙の7人』やら、自分たちでこしらえてしまうのです。こういう日曜大工にとどまらないDIY精神は、アメリカ人の国民性とも言えます。

 というわけでA1とB1がセローンのカバー。それぞれ10分近い大作です。
 ただしそれだけだと、LP両面を使い切ることはできません。収録時間が余ってしまいます。そこで懐かしのスタンダード・ナンバーをディスコ化し、埋め草としました。

 え、どうしてわざわざ戦間期のスイング音楽をディスコ化するんだよ。そう思いますよね。
 アメリカという若い国は、自国の文化をとても大切にするのです。もしかしたらヨーロッパの歴史や伝統に対する、劣等感のあらわれなのかもしれません。アーリー・ジャズやティン・パン・アレイのスタンダードが21世紀の今に至るまで、そのときどきの流行りのスタイルでカバーされ、ずっと愛聴され続けているのは、やはりアメリカ人の国民性と言えましょう。

 本作はフランスの最新ディスコと、ノスタルジックな懐メロが1枚の盤上に並んでいます。
 不思議なことに、チグハグな感じはまったくありません。アメリカ人がアメリカ人向けに作った、アメリカ人がアメリカ人らしさを貫いたアルバム。むせ返りそうになるほど、アメリカ、アメリカ、アメリカ。

 セローンのカバーは上々。演奏を担ったミュージシャンたちは、LAモータウンの伴奏をしていた面々です。岩石のような演奏力です。
 残念なことにセローンのオリジナルにまぶしてあったエロ要素は、まんまと浄化されてしまいました。まるでエロビデオがイメージビデオに格下げ(いや、格上げか)されてしまったかのような、って例えがよくわからねえ。ともあれ「エロに厳しい」という、キリスト教に根ざした強い道徳観がちらちら垣間見えますね。これもアメリカか。

 私はどちらかというと、スタンダード・ナンバーの方が気になります。
 ジャジーな伴奏で歌われることの多い"September in the Rain"が、ディスコ・ビートで蘇りました。歌っているおっさん誰なんだよ?

 なお"September in the Rain"は、9月に9月を歌った歌ではありません。そういう点で、アースの「セプテンバー」に似ています。もしかしたらモーリス・ホワイトも、そこいらへんあえてなぞったのではないか。先人たちの文化に敬意を表したのではないか。だとしたらこれはこれで、いかにもアメリカらしいと言えます。
★★★

Produced by Frankie Crocker and Marc Paul Simon

Arrangements: Arthur G. Wright
Engineer: Deni King
Assistant Engineer: Phil Jamtaas
Mastering: Allen Zentz
Mixed at Record Plant, Los Angeles
Conductor: Arthur G. Wright
Copyist: Donald Cooke & Clarence Lawrey
Special Disco Mix on A1, B1 by Paul Dugan

Musicians
Piano: Sylvester Rivers & Sonny Burke
Rhodes & Clavinet: John Barnes
Drums: James Gadson
Conga: Joe L. Clayton
Bass: Wilton Felder, Scott Edwards, Ron Brown
Guitars: Ray Parker, Davit T. Walker
Trombone: Maurice Spears
Alto Saxophone: Plas Johnson
Clarinet & Soprano Sax: William E. Green
Trumpet: Robert Bryant, Leslie Drayton, Gary Grant, Warren Roche
Bass Trombone: Lew McReary
Baritone Sax: John J. Kelson
Tenor Sax: Herman Riley
Tambourine & Percussion: Jack Ashford
Concert Master: Sid Sharpe (A1, B1), Harry Bluestone (A2, A3, A4, B2, B3)
Violas: Gareth Nuttycombe, Raymond Kelly, Rolice Dale, Linn Subotnick
Violins: Jay Rosen, William Kurasch, Murray Adler, James Getzoff, Bernard Kundell, Lou Klass, Joy Lyle, Marvin Limonick, Allan Harshman, Henry Ferber, Israel Baker, Paul Shure, Jack Shulman, Assa Drori
Cello: Jesse Ehrlich, Karen B. Henderson

Art Direction and Design: Stephen Lumel / Gribbitt!
Cover Illustration: Robert Krogle

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