
A1 | He's a Friend | B1 | Chains |
A2 | A Part of Me | B2 | The Sweeter You Treat Her |
A3 | I Won't Take No | B3 | It's Not What You Got |
A4 | Never Gonna Leave You | B4 | On My Way Home |
A5 | Get It While It's Hot | B5 | All of My Love |
本作のジャケットを見て、記憶の扉が開いてしまった。思い浮かんだのはこれ。

『ブラック・レイン』という映画の、一場面です。
『ブラック・レイン』は、年号が昭和から平成に変わって間もない頃に公開された、アメリカ映画です。これが当時、とんでもない話題になりました。
平成生まれの若いみなさんは、ご存知ないかもしれません。私と同じおっさん世代ならきっと、かすかに記憶しているでしょう。平成の幕開けに日本をざわつかせた珍作『ブラック・レイン』とは、いったい何だったのか。
あの『エイリアン』や『ブレードランナー』の名匠、リドリー・スコット監督が大阪ロケを敢行したヴァイオレンス・アクション大作です。
バブル経済に沸き立つ大阪を舞台に、任侠を重んじる昔気質のヤクザと、新人類のチンピラが偽札の利権を巡って殺し合う、血みどろのストーリー。当時世界最高峰の監督が、仁義なきヤクザ映画のメガホンを取るわけです。ハリウッド・スターと、日本人俳優が豪華共演します。話題にならないわけがない。
昔気質の親分を若山富三郎が、敵対するチンピラを松田優作が演じました。ニューヨークからチンピラを追ってきた汚職刑事がマイケル・ダグラス、その相棒になる大阪府警の警部補に高倉健。贅沢なキャスティングです。全員が全員、撮影現場で自己主張しそうなタイプ。彼らをまとめあげた監督の手腕には恐れ入ります。世界最高峰は伊達じゃない。
『ブラック・レイン』は完成するずっと前から、映画ファンの間で注目を集めていました。大阪近辺のそこかしこで、ハリウッドのロケ隊が撮影をしていましたからね。かなり大所帯のロケ隊で、隠密行動なんてできやしません。地元の関西人は度々ロケ現場に遭遇していたようで、まだSNSなどなかった時代に「どこそこで撮影してた」「誰それを見かけた」という目撃情報が職場や学校、お好み焼き屋やスナックで飛び交っていたのです。
『エイリアン』で宇宙船の内部を、『ブレードランナー』で近未来のLAを鮮烈な映像美学で描いたリドリー・スコット監督が、地元大阪を、にじむ街の灯を、パチパチパンチをどのように表現してくれるのか。関西人のみならず、全国の映画ファンはまるで遠足を心待ちにする子供のようにワクワクテカテカしながら、指折り数えて劇場公開を待っていました。当時神戸に住んでいた私も、あの頃の熱気はよく覚えています。
というわけで『ブラック・レイン』は、公開前から異様なほどの盛り上がりを見せていました。しかし当時たいへんな話題になったいちばんの理由は、劇場公開からほどなく悪役の松田優作が急逝したことでしょう。スクリーンであれほど元気に暴れていた優作の訃報は、世間に衝撃を与えました。芸能ニュースはしばらくの間、優作関係の記事に埋め尽くされ、結果『ブラック・レイン』への注目度もさらに高まったというわけ。
そのせいか、松田優作の遺作を『ブラック・レイン』と思い込んでいる人は少なくありません。本当はジョイナーと共演した例のアレなんだぞ、と庭に掘った穴に叫んでおきますね。
映画のデキは微妙です。ちょっとしょっぱいです。ただし面白いポイントがあちこちにあって、見る者を飽きさせません。
しかしそれは純然たる映画としての面白さというよりは、「ハリウッドがいつものようにヘンテコな日本描写をやっちまったー」とか、「あっ、ガッツさんだ」とか「ホタテマンの人がいるぞ」とか、そういう意味での面白さです。日本人なら目が離せないこれらポイントも、欧米人から見たら退屈だったのではないかな。
たくさんの人が指摘している通り、この映画の致命的な欠点はヨレヨレの脚本にあります。監督も、高倉健も、そしてプロデューサーを兼任していたマイケル・ダグラスも、最初に脚本を読んだとき「これはひどい」と異口同音にニャンちゅうになって嘆息したらしい。
『ブラック・レイン』をごらんになった方は「うーむ、なんかこれ、どこかで見たような話だよなあ…」そういう感想を抱いたかもしれません。さもありなん。
話の骨子は『マンハッタン無宿』です。『レッドブル』のようでもあります。血気はやるチンピラが旧体制の組織でのし上がっていく様子は『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』を思い出させます。アタマの固い上司の描き方は『ガン・ホー』でしょうか。
いろいろな映画のあんな場面、こんな場面をかき集めて貼り合わせたようなストーリーでした。斬新さや意外性はゼロ。ベルトコンベアの上を進むような脚本です。あ、意外だったのは若富の最期。「えっ、あの拝一刀がこんな不意打ちで呆気なく討ち取られてしまうんか」とお口あんぐり、ダッチワイフになってしまった観客多数。

痛がる若富(左下)、半纏を着ている右の人物はアル・レオン。暗くてよく見えないや。
映画は脚本が命、などとよく言われます。にもかかわらず『ブラック・レイン』については、それなりに見られる映画に仕上がりました。ヨレヨレの脚本でも、他でがんばれば何とかなるということでしょう。優秀なプロレスラーなら、ホウキを相手にプロレスを成立させてしまう、そういう卓越の域。やっぱり、世界最高峰は伊達じゃない。
つまらなくはない。
ただし名作ではない。
公開後30数年経った今日、映画『ブラック・レイン』の評価はそんなところ。
熱狂的なファンがいるわけでもなく、マニアの心をぐっとつかむ要素もないので、カルト映画という扱いもされません。ドルフ・ラングレンがエイリアンと戦っていた映画のように、流れる歳月の中で、静かに忘れ去られていく定めでしょう。
このほろ苦い風評を吹き飛ばすほど、サントラCDは見事な出来映えです。聴きどころ満載。

映画本編ではチラッとしか流れなかったレ・リタ・ミツコ&スパークスの"Singing in the Shower"も、みっちり聴けますよ。
エンドロールで流れるグレッグ・オールマンの"I'll Be Holding On"なんて、イントロからすでにもう完全に演歌です。作詞したウィル・ジェニングスはアメリカの阿久悠みたいな人。
サントラには坂本龍一の曲もあります。何でも坂本は、マイケル・ダグラスから日本の刑事役をやらないかと持ちかけられたのだとか。このあたりの事情は「WHAT'S MICHAEL?」という坂本のエッセーに記されています。撮影期間がアルバム制作とバッティングしたため、映画出演は泣く泣く辞退しました。そのかわりサントラに自分の曲を提供したというわけ。
歴史にイフはありません。それでもなお、映画界にはたくさんのイフがあり、映画ファンの夢や妄想をかき立てます。もしロッキーをライアン・オニールが演じていたら…もしオビワンを三船が演じていたら…もしターミネーターをランス・ヘンリクセンが演じていたら…みたいなのね。もしマイケル・ダグラスの誘いに乗って、坂本が松本警部補を演じていたらどうなったのか、興味は尽きません。
サントラCDの前半は挿入歌のコンピレーションで、80年代末のポピュラー音楽、そのおいしいところがたっぷり詰め込まれています。こういうサウンドが当時最先端だったのです。
CD後半はハンス・ジマーのスコア。シンセサイザーで生成したなんちゃって和楽器の音が、オリエンタルでやかましい旋律を奏でます。
この時点ではハンス・ジマー、まだ売り出し中の小物でした。90年代、00年代とキャリアを重ね、やがて映画音楽の大物に成り上がります。『ブラック・レイン』の仕事も多少は踏み台になったのではないかな。
私はこのサントラCD、ときどき取り出しては聴きます。単純に好きだから。音楽として上出来だから。でもそれだけではありません。
懐かしい音楽を耳にした瞬間、数々の思い出が蘇ります。世の中も、私自身も、キラキラして、そしてギラギラしていたあの頃。ほんのひととき、あの頃に戻るために、私はこのサントラCDを聴くのです。
というわけで、アナログ・レコードに関係のない駄文を長々と綴らせていただきました。
エディ・ケンドリックスについてはまるっきり語ることなく、このまま筆をおかせていただきます。なんてひどいブログだ。そういや『ブラック・レイン』のサントラCDには、テンプスのカバーも入っていたっけ。

『ブラック・レイン』という映画の、一場面です。
『ブラック・レイン』は、年号が昭和から平成に変わって間もない頃に公開された、アメリカ映画です。これが当時、とんでもない話題になりました。
平成生まれの若いみなさんは、ご存知ないかもしれません。私と同じおっさん世代ならきっと、かすかに記憶しているでしょう。平成の幕開けに日本をざわつかせた珍作『ブラック・レイン』とは、いったい何だったのか。
あの『エイリアン』や『ブレードランナー』の名匠、リドリー・スコット監督が大阪ロケを敢行したヴァイオレンス・アクション大作です。
バブル経済に沸き立つ大阪を舞台に、任侠を重んじる昔気質のヤクザと、新人類のチンピラが偽札の利権を巡って殺し合う、血みどろのストーリー。当時世界最高峰の監督が、仁義なきヤクザ映画のメガホンを取るわけです。ハリウッド・スターと、日本人俳優が豪華共演します。話題にならないわけがない。
昔気質の親分を若山富三郎が、敵対するチンピラを松田優作が演じました。ニューヨークからチンピラを追ってきた汚職刑事がマイケル・ダグラス、その相棒になる大阪府警の警部補に高倉健。贅沢なキャスティングです。全員が全員、撮影現場で自己主張しそうなタイプ。彼らをまとめあげた監督の手腕には恐れ入ります。世界最高峰は伊達じゃない。
『ブラック・レイン』は完成するずっと前から、映画ファンの間で注目を集めていました。大阪近辺のそこかしこで、ハリウッドのロケ隊が撮影をしていましたからね。かなり大所帯のロケ隊で、隠密行動なんてできやしません。地元の関西人は度々ロケ現場に遭遇していたようで、まだSNSなどなかった時代に「どこそこで撮影してた」「誰それを見かけた」という目撃情報が職場や学校、お好み焼き屋やスナックで飛び交っていたのです。
『エイリアン』で宇宙船の内部を、『ブレードランナー』で近未来のLAを鮮烈な映像美学で描いたリドリー・スコット監督が、地元大阪を、にじむ街の灯を、パチパチパンチをどのように表現してくれるのか。関西人のみならず、全国の映画ファンはまるで遠足を心待ちにする子供のようにワクワクテカテカしながら、指折り数えて劇場公開を待っていました。当時神戸に住んでいた私も、あの頃の熱気はよく覚えています。
というわけで『ブラック・レイン』は、公開前から異様なほどの盛り上がりを見せていました。しかし当時たいへんな話題になったいちばんの理由は、劇場公開からほどなく悪役の松田優作が急逝したことでしょう。スクリーンであれほど元気に暴れていた優作の訃報は、世間に衝撃を与えました。芸能ニュースはしばらくの間、優作関係の記事に埋め尽くされ、結果『ブラック・レイン』への注目度もさらに高まったというわけ。
そのせいか、松田優作の遺作を『ブラック・レイン』と思い込んでいる人は少なくありません。本当はジョイナーと共演した例のアレなんだぞ、と庭に掘った穴に叫んでおきますね。
映画のデキは微妙です。ちょっとしょっぱいです。ただし面白いポイントがあちこちにあって、見る者を飽きさせません。
しかしそれは純然たる映画としての面白さというよりは、「ハリウッドがいつものようにヘンテコな日本描写をやっちまったー」とか、「あっ、ガッツさんだ」とか「ホタテマンの人がいるぞ」とか、そういう意味での面白さです。日本人なら目が離せないこれらポイントも、欧米人から見たら退屈だったのではないかな。
たくさんの人が指摘している通り、この映画の致命的な欠点はヨレヨレの脚本にあります。監督も、高倉健も、そしてプロデューサーを兼任していたマイケル・ダグラスも、最初に脚本を読んだとき「これはひどい」と異口同音にニャンちゅうになって嘆息したらしい。
『ブラック・レイン』をごらんになった方は「うーむ、なんかこれ、どこかで見たような話だよなあ…」そういう感想を抱いたかもしれません。さもありなん。
話の骨子は『マンハッタン無宿』です。『レッドブル』のようでもあります。血気はやるチンピラが旧体制の組織でのし上がっていく様子は『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』を思い出させます。アタマの固い上司の描き方は『ガン・ホー』でしょうか。
いろいろな映画のあんな場面、こんな場面をかき集めて貼り合わせたようなストーリーでした。斬新さや意外性はゼロ。ベルトコンベアの上を進むような脚本です。あ、意外だったのは若富の最期。「えっ、あの拝一刀がこんな不意打ちで呆気なく討ち取られてしまうんか」とお口あんぐり、ダッチワイフになってしまった観客多数。

痛がる若富(左下)、半纏を着ている右の人物はアル・レオン。暗くてよく見えないや。
映画は脚本が命、などとよく言われます。にもかかわらず『ブラック・レイン』については、それなりに見られる映画に仕上がりました。ヨレヨレの脚本でも、他でがんばれば何とかなるということでしょう。優秀なプロレスラーなら、ホウキを相手にプロレスを成立させてしまう、そういう卓越の域。やっぱり、世界最高峰は伊達じゃない。
つまらなくはない。
ただし名作ではない。
公開後30数年経った今日、映画『ブラック・レイン』の評価はそんなところ。
熱狂的なファンがいるわけでもなく、マニアの心をぐっとつかむ要素もないので、カルト映画という扱いもされません。ドルフ・ラングレンがエイリアンと戦っていた映画のように、流れる歳月の中で、静かに忘れ去られていく定めでしょう。
このほろ苦い風評を吹き飛ばすほど、サントラCDは見事な出来映えです。聴きどころ満載。

映画本編ではチラッとしか流れなかったレ・リタ・ミツコ&スパークスの"Singing in the Shower"も、みっちり聴けますよ。
エンドロールで流れるグレッグ・オールマンの"I'll Be Holding On"なんて、イントロからすでにもう完全に演歌です。作詞したウィル・ジェニングスはアメリカの阿久悠みたいな人。
サントラには坂本龍一の曲もあります。何でも坂本は、マイケル・ダグラスから日本の刑事役をやらないかと持ちかけられたのだとか。このあたりの事情は「WHAT'S MICHAEL?」という坂本のエッセーに記されています。撮影期間がアルバム制作とバッティングしたため、映画出演は泣く泣く辞退しました。そのかわりサントラに自分の曲を提供したというわけ。
歴史にイフはありません。それでもなお、映画界にはたくさんのイフがあり、映画ファンの夢や妄想をかき立てます。もしロッキーをライアン・オニールが演じていたら…もしオビワンを三船が演じていたら…もしターミネーターをランス・ヘンリクセンが演じていたら…みたいなのね。もしマイケル・ダグラスの誘いに乗って、坂本が松本警部補を演じていたらどうなったのか、興味は尽きません。
サントラCDの前半は挿入歌のコンピレーションで、80年代末のポピュラー音楽、そのおいしいところがたっぷり詰め込まれています。こういうサウンドが当時最先端だったのです。
CD後半はハンス・ジマーのスコア。シンセサイザーで生成したなんちゃって和楽器の音が、オリエンタルでやかましい旋律を奏でます。
この時点ではハンス・ジマー、まだ売り出し中の小物でした。90年代、00年代とキャリアを重ね、やがて映画音楽の大物に成り上がります。『ブラック・レイン』の仕事も多少は踏み台になったのではないかな。
私はこのサントラCD、ときどき取り出しては聴きます。単純に好きだから。音楽として上出来だから。でもそれだけではありません。
懐かしい音楽を耳にした瞬間、数々の思い出が蘇ります。世の中も、私自身も、キラキラして、そしてギラギラしていたあの頃。ほんのひととき、あの頃に戻るために、私はこのサントラCDを聴くのです。
というわけで、アナログ・レコードに関係のない駄文を長々と綴らせていただきました。
エディ・ケンドリックスについてはまるっきり語ることなく、このまま筆をおかせていただきます。なんてひどいブログだ。そういや『ブラック・レイン』のサントラCDには、テンプスのカバーも入っていたっけ。
★★★ | 採点表を見る |
Produced by Norman Harris
Vocals Arranged by Allan Felder
Rhythm Musicians
Drums: Earl "The Pearl" Young, Charles Collins
Guitar: Norman Harris, Bobby Eli, T. J. Tindall
Vibes: Vincent Montana
Percussion: Allan Felder
Bass: Ron Baker, Michael "Sugar Bear" Foreman
Keyboards: Ron "Have Mercy" Kersey, Carlton Kent, Bruce Gray, T. G. Conway
Congas: Larry Washington
Strings & Horns
Don Renald and a Fantastic Group!
Background Singers
Bruce Hawes
Carl Helm
Bruce Gray
Allan Felder
Darryl Grant
Barbara Ingram
Carla Benson
Evette Benton
Album Coordinator: Barbara Hill
Recorded at Sigma Sound Studios, Philadelphia, PA
Mastered at Frankford / Wayne Studios, Philadelphia, PA
Engineer: Carl Paroulo
Assistant Engineer: Dirk Devlin
Concept: Frank Mulvey
Photography: Phil Fewsmith
Art Direction and Design: Stephen Lumel / Gribbitt!
Vocals Arranged by Allan Felder
Rhythm Musicians
Drums: Earl "The Pearl" Young, Charles Collins
Guitar: Norman Harris, Bobby Eli, T. J. Tindall
Vibes: Vincent Montana
Percussion: Allan Felder
Bass: Ron Baker, Michael "Sugar Bear" Foreman
Keyboards: Ron "Have Mercy" Kersey, Carlton Kent, Bruce Gray, T. G. Conway
Congas: Larry Washington
Strings & Horns
Don Renald and a Fantastic Group!
Background Singers
Bruce Hawes
Carl Helm
Bruce Gray
Allan Felder
Darryl Grant
Barbara Ingram
Carla Benson
Evette Benton
Album Coordinator: Barbara Hill
Recorded at Sigma Sound Studios, Philadelphia, PA
Mastered at Frankford / Wayne Studios, Philadelphia, PA
Engineer: Carl Paroulo
Assistant Engineer: Dirk Devlin
Concept: Frank Mulvey
Photography: Phil Fewsmith
Art Direction and Design: Stephen Lumel / Gribbitt!
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