A1 | Life Is You | B1 | She Made Me Smile |
A2 | Long Way From Heaven | B2 | Caught in the Rain |
A3 | You Are a Song | B3 | Is It Love |
A4 | To a Gentler Time | B4 | Another Part of Me |
A5 | Grab at a Straw | B5 | Ain't It Like Home |
大きな窓からの陽光が観葉植物に降り注ぐ瀟洒な部屋。そこにルンペン兄貴のツープラトン。
とてつもなく、内容を期待させるジャケットではありませんか。手にした瞬間、購入決定。
ボーボーの蓬髪に末広がりのジーンズ。ブーツの中はさぞや芳醇でしょう。スーツやネクタイとは無縁の生態系。たぶん、パンツは毎日替えてない。裏返せばまだ大丈夫、とか言ってそう。
さてジャケット写真の右に写っているルンペン1号、ジョン・バドーフは翌年、シルヴァーというバンドを結成することになります。
ジャケット裏のバドーフ(1975年頃)
いやあ、ストレート・アヘッドなルンペンです。お風呂入れよ。宿題やったか?
そしてこちらはシルヴァーの集合写真(1976年頃)
みなさん長髪なのに、あまり不潔な感じはしませんね。右下の人物がジョン・バドーフだよ。
2枚の写真を比べてみると、たった1~2年の間に、デオドラントなルンペンへと変貌していくバドーフの様子がうかがえます。
思えば70年代の真ん中あたりは、音楽業界にとっても転換点だったのでしょう。
それ以前の時代、50~60年代であれば、歌やギターのめっちゃ上手いまじもんのルンペンたちが、音楽界にはたくさんいました。「大好きな音楽さえできればそれでハッピーや」という太平楽な彼らを、音楽業界のオトナたちが取り込んでいたのです。
契約やら印税やら、本来ならミュージシャンとしての正当な権利がどうたらこうたらなんて、当時のルンペンには知る由もありません。無知な彼らを、ずるいオトナたちが甘言を弄して利用し、そして搾取していたのでした。
70年代に入り、社会は変わります。もちろん音楽業界だって、その波からは逃れられません。ルンペンの間にも啓蒙が進み、やがて自分たちが不当にこき使われた事実に気付くのです。
カスリ取られた分け前を奪い返そうと、ルンペンたちが蜂起しました。大きな歴史の岩が動くときの端緒はいつでもそう、無知の知なのです。
音楽業界の近代化、あるいは産業化は、この時代に急進します。産業ロックとは言い得て妙です。
「ホテル・カリフォルニア」の謎だらけの歌詞は、もしかしたらこのへんのことを歌ったんじゃないのかなあ。違ってたらごめんなさい。
ビッグバンを経た音楽業界にはもう、まじもんのルンペンたちの居場所は残されていませんでした。純朴なルンペンは傷付いて去り、そして利に聡いルンペンは居残るために変節を受け入れるのです。
彼らの一部はルンペンという生き方を捨て、ルンペンというキャラ設定を演じるだけになります。
ルンペン1号のジョン・バドーフは叙上の通り、シルヴァーを結成して心機一転、ポップスの王道路線に乗り入れます。心の中では、とっくにルンペンを卒業していたのかもしれません。
ではルンペン2号、マーク・ロドニーはいったいどこへ行ってしまったのでしょうか?
わかりません。これより先、音楽活動の足跡がぶっつり途切れてしまうのです。
おそらくまじもんのルンペンだったロドニーにとって、変革を遂げた音楽業界の居心地がキュークツになった、または居場所がなくなっちゃった、そういうことなのではないかと察します。
ルンペンはあくまで営業用のキャラ、という設定を呑んでまでして、音楽業界にしがみつくことができなかったのでしょう。
ちなみにマーク・ロドニーのお父さんは、レッド・ロドニーというトランペット奏者。チャーリー・パーカーといっしょにビ・バップしていた人です。
真剣で斬り合うような演奏活動をしていた父ちゃんの背中を見て育ったロドニーには、変わり果てた音楽業界も、あるいは相棒のバドーフも、そしてシルヴァーも、スポーツチャンバラのようにしか感じられなかったのではないかなあ。
というわけで本作、ミュージシャンも、業界も、そして音楽そのものも激しく移ろいゆく時代の鏡として、はたまた直後に決裂することになる仲よしデュオのラスト・レコーディングとして、たいへん興味深い。
こういう風体から連想するほどフォークやカントリーの色は強くなくて、意外とポップな味わいのアルバムです。さわやかで、ペパーミントで、もうひと押しでエア・サプライにだってなれるぞ、ってなくらい。昨日のパンツ替えてないくせに。
ほとんどが彼らのオリジナル曲です。しかしA3とA4は当時イケイケだったジム・ウェザリーのカバー。
このA3とA4がモロ、シルヴァーの作風に連なるんですよね。仲よしデュオのようでいて、実のところ、創作的には行き詰っていたのかな。ふたりだけの閉塞状況に風穴を開けたのが、外部ライターのウェザリーってことだもんね。
シルヴァーのアルバム冒頭の曲は、ごらんの通り「ミュージシャンとして食ってくのってまじ無理ゲー」と歌っています。
この歌詞の生まれた背景には、時代の奔流に揉まれて別々の道を選択した、ふたりのルンペンの友情と別離の物語があったのです。
とてつもなく、内容を期待させるジャケットではありませんか。手にした瞬間、購入決定。
ボーボーの蓬髪に末広がりのジーンズ。ブーツの中はさぞや芳醇でしょう。スーツやネクタイとは無縁の生態系。たぶん、パンツは毎日替えてない。裏返せばまだ大丈夫、とか言ってそう。
さてジャケット写真の右に写っているルンペン1号、ジョン・バドーフは翌年、シルヴァーというバンドを結成することになります。
ジャケット裏のバドーフ(1975年頃)
いやあ、ストレート・アヘッドなルンペンです。お風呂入れよ。宿題やったか?
そしてこちらはシルヴァーの集合写真(1976年頃)
みなさん長髪なのに、あまり不潔な感じはしませんね。右下の人物がジョン・バドーフだよ。
2枚の写真を比べてみると、たった1~2年の間に、デオドラントなルンペンへと変貌していくバドーフの様子がうかがえます。
思えば70年代の真ん中あたりは、音楽業界にとっても転換点だったのでしょう。
それ以前の時代、50~60年代であれば、歌やギターのめっちゃ上手いまじもんのルンペンたちが、音楽界にはたくさんいました。「大好きな音楽さえできればそれでハッピーや」という太平楽な彼らを、音楽業界のオトナたちが取り込んでいたのです。
契約やら印税やら、本来ならミュージシャンとしての正当な権利がどうたらこうたらなんて、当時のルンペンには知る由もありません。無知な彼らを、ずるいオトナたちが甘言を弄して利用し、そして搾取していたのでした。
70年代に入り、社会は変わります。もちろん音楽業界だって、その波からは逃れられません。ルンペンの間にも啓蒙が進み、やがて自分たちが不当にこき使われた事実に気付くのです。
カスリ取られた分け前を奪い返そうと、ルンペンたちが蜂起しました。大きな歴史の岩が動くときの端緒はいつでもそう、無知の知なのです。
音楽業界の近代化、あるいは産業化は、この時代に急進します。産業ロックとは言い得て妙です。
「ホテル・カリフォルニア」の謎だらけの歌詞は、もしかしたらこのへんのことを歌ったんじゃないのかなあ。違ってたらごめんなさい。
ビッグバンを経た音楽業界にはもう、まじもんのルンペンたちの居場所は残されていませんでした。純朴なルンペンは傷付いて去り、そして利に聡いルンペンは居残るために変節を受け入れるのです。
彼らの一部はルンペンという生き方を捨て、ルンペンというキャラ設定を演じるだけになります。
ルンペン1号のジョン・バドーフは叙上の通り、シルヴァーを結成して心機一転、ポップスの王道路線に乗り入れます。心の中では、とっくにルンペンを卒業していたのかもしれません。
ではルンペン2号、マーク・ロドニーはいったいどこへ行ってしまったのでしょうか?
わかりません。これより先、音楽活動の足跡がぶっつり途切れてしまうのです。
おそらくまじもんのルンペンだったロドニーにとって、変革を遂げた音楽業界の居心地がキュークツになった、または居場所がなくなっちゃった、そういうことなのではないかと察します。
ルンペンはあくまで営業用のキャラ、という設定を呑んでまでして、音楽業界にしがみつくことができなかったのでしょう。
ちなみにマーク・ロドニーのお父さんは、レッド・ロドニーというトランペット奏者。チャーリー・パーカーといっしょにビ・バップしていた人です。
真剣で斬り合うような演奏活動をしていた父ちゃんの背中を見て育ったロドニーには、変わり果てた音楽業界も、あるいは相棒のバドーフも、そしてシルヴァーも、スポーツチャンバラのようにしか感じられなかったのではないかなあ。
というわけで本作、ミュージシャンも、業界も、そして音楽そのものも激しく移ろいゆく時代の鏡として、はたまた直後に決裂することになる仲よしデュオのラスト・レコーディングとして、たいへん興味深い。
こういう風体から連想するほどフォークやカントリーの色は強くなくて、意外とポップな味わいのアルバムです。さわやかで、ペパーミントで、もうひと押しでエア・サプライにだってなれるぞ、ってなくらい。昨日のパンツ替えてないくせに。
ほとんどが彼らのオリジナル曲です。しかしA3とA4は当時イケイケだったジム・ウェザリーのカバー。
このA3とA4がモロ、シルヴァーの作風に連なるんですよね。仲よしデュオのようでいて、実のところ、創作的には行き詰っていたのかな。ふたりだけの閉塞状況に風穴を開けたのが、外部ライターのウェザリーってことだもんね。
シルヴァーのアルバム冒頭の曲は、ごらんの通り「ミュージシャンとして食ってくのってまじ無理ゲー」と歌っています。
この歌詞の生まれた背景には、時代の奔流に揉まれて別々の道を選択した、ふたりのルンペンの友情と別離の物語があったのです。
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Produced and Arranged by Tom Sellers
Engineer: Joe Sidore
John Batdorf: Acoustic Guitar and Vocals
Mark Rodney: Lead Acoustic Guitar and Vocals
Russ Kunkel: Drums
Scott Edwards: First Bass
Rick Carlos: Second Bass
Dean Parks: Electric Guitar
Gary Coleman: Percussion & Vibes
Tom Hensley: Keyboards
Ginger Blake, Maxine Willard, Julia Tillman: Background Vocals (A4, A5, B2)
Marty Gwinn: Background Vocals (B3)
Joe Sidore: Background Vocals (B3), Arp Synthesizer (A5)
Tom Sellers: Organ and Tack Piano (B1), Piano (A3, A4), Arp Synthesizer (A5)
Concert Masters: Sid Sharp, Emanuel Moss
Recorded at The Sound Labs, Inc., Hollywood, Calif.
Mastered at Mastering Labs, Hollywood, Calif.
Photography: Edie Baskin
Art Direction & Design: Bob Heimall
Management and Direction: Rob Heller Enterprises
Production Assistants: John "Sebastian" Simmons, Joe Sidore
Engineer: Joe Sidore
John Batdorf: Acoustic Guitar and Vocals
Mark Rodney: Lead Acoustic Guitar and Vocals
Russ Kunkel: Drums
Scott Edwards: First Bass
Rick Carlos: Second Bass
Dean Parks: Electric Guitar
Gary Coleman: Percussion & Vibes
Tom Hensley: Keyboards
Ginger Blake, Maxine Willard, Julia Tillman: Background Vocals (A4, A5, B2)
Marty Gwinn: Background Vocals (B3)
Joe Sidore: Background Vocals (B3), Arp Synthesizer (A5)
Tom Sellers: Organ and Tack Piano (B1), Piano (A3, A4), Arp Synthesizer (A5)
Concert Masters: Sid Sharp, Emanuel Moss
Recorded at The Sound Labs, Inc., Hollywood, Calif.
Mastered at Mastering Labs, Hollywood, Calif.
Photography: Edie Baskin
Art Direction & Design: Bob Heimall
Management and Direction: Rob Heller Enterprises
Production Assistants: John "Sebastian" Simmons, Joe Sidore
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