2023/05/15

Roy Eldridge / Happy Time ('75)

A1Sweethearts on ParadeB1I Want a Little Girl
A2Willow Weep for MeB2On the Sunny Side of the Street
A3Makin' WhoopeeB3I Can't Get Started
A4Gee Baby Ain't I Good to YouB4Stormy Monday
A5All of MeB5Let Me Off Uptown
 ジャズ好きな人々に、トランペットのオキニは誰ですか?と聞いてみたら、どんな答えが返ってくるでしょうか。

 サッチモは別枠としても、マイルス・デイヴィス、クリフォード・ブラウン、チェット・ベイカーあたりが人気者で、ケニー・ドーハム、フレディ・ハバード、ドナルド・バードらが続く。
 アート・ファーマーとか、リー・モーガン、ウディ・ショウなど、有名どころの名前が次々と挙がり、やがてジョン・アードレイやビル・ハードマンのような通好みのトランペッターがさんざっぱら列挙されてもなお、ロイ・エルドリッジの名は呼ばれないのではないか、そんな気がします。

 知名度はそこそこあるのに、愛聴する人はほとんどいない。
 ロイ・エルドリッジは、そういう存在です。

 かく申す私も本作を入手するまで、彼のレコードは1枚も持っていませんでした。
 何だかめっちゃ楽しそうなタイトルに、思わず手が伸びてしまった次第。

 奏者の顔ぶれをごらん下さい。パブロ・レコーズのオールスター軍団です。
 この人たちが、A面のアタマからB面の尻尾まで、とことんハッピーなジャズを繰り広げます。

 この時点で「リトル・ジャズ」は還暦をとうに過ぎていました。
 加齢による衰えは、少なからずあったことでしょう。しかしそれさえも、パブロにとっちゃセールス・ポイントみたいなもの。
 上機嫌で歌い、ラッパを豪快に鳴らすリトル・ジャズの両脇を、ピーターソンとパスが助さん格さんのごとく、練達のプレイでがっちり支えました。パブロならではの全員野球に、ハピネスの嵐が吹き荒れます。

 みなさんご存知のスタンダード曲がズラリ。
 A3は、いかにもピーターソンなイントロがたまりません。卑猥な歌をみんなで嬉しそうに、楽しそうにプレイしています。
 近年、世良公則のカバーが話題になったB2。トラック後半、リトル・ジャズが攻めに攻めます。がんばりすぎて途中「ん?」となる箇所があったりするのも、いかにもジャズですな。ンモー、おじいちゃんったら。

 アルバム両面、計48分くらい。ちょっと長く感じます。

 その間、リトル・ジャズもピーターソンもパスも、いっさい緩急をつけることなく、ひたすらに全力プレイをぶっ通します。いくらハッピーな時間でも、これではさすがにしんどい。
 アルバム全体を短くするか、途中に箸休め的なトラックを配置したりすれば、聴きやすい作品になれたんじゃないかなあ。

 ま、そういう気遣いのない、雑把なアルバムの作り方も、パブロの持ち味と言えましょう。
 いかにも「パブロです」ってジャケットを手にした時点で、そんくらい覚悟しとけってことです。
★★★

Personnel
Roy Eldridge: Trumpet & Vocals
Oscar Peterson: Piano
Joe Pass: Guitar
Ray Brown: Bass
Eddie Locke: Drums

Produced by Norman Granz

Liner Notes by Benny Green
Photography by Phil Stern
Cover Design & Layout by Norman Granz
Recorded 4th June, 1975, New York

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