2019/10/17

The Tymes / Tymes Up ('76)

A1Only Your LoveB1Hypnotized
A2It's CoolB2Goin' Through the Motions
A3If I Can't Make You SmileB3To the Max(Imum)
A4God's Gonna Punish YouB4Good Morning Dear Lord
 ザ・タイムスは、1963年に「なぎさの誓い」というシングルが大ヒットしたことで知られています。
 この「なぎさの誓い」はその後、様々なアーティストにカバーされ、ヒットされてきました。私の世代だとティモシー・B・シュミットの、若い人たちならAll-4-Oneのカバー・バージョンがお馴染みではないかな。

 ちなみにザ・タイムスは決して、「なぎさの誓い」がヒットしただけの一発屋ではありません。彼らのことをもっと知りたい、とお思いの方にはこのCD、"The Best of The Tymes Cameo Parkway 1963-1964"をオススメします。

 タイトル通り、彼らがノリにノッていた1963~64年の吹き込みをまとめたもの。うんざりするほど曲数が多く、解説がていねいで、おまけに音質がいい。これはお買い得ですよ。"Chances Are"なんか好きだなあ。

 さて、時は1976年。すっかり過去の人になっちゃったザ・タイムスが、フィリー・ソウルの波に乗って再浮上を目論んだのが本作です。もともとフィラデルフィアのグループですから、フィリー・ソウル化するのは時代の必然と言えなくもありません。
 オリジナル「なぎさの誓い」のイントロで、ブツブツつぶやいているオッサンいるじゃないですか。あのオッサンが本作のプロデューサー、ビリー・ジャクソンです。

 本作の構成はおおむね、A面が直球モード、B面が変化球モードとなっております。
 A面の出来は凡庸。よくもなく、悪くもなくといったところ。いきおい、本作の聴きどころはB面に集中することになります。

 B1はファンクなナンバー。この当時、こういったサウンドに一定の需要があったのでしょう。それはわかる。しかしザ・タイムスがわざわざやらんでもいいんじゃないかって気がしなくもない。
 B2はいきなり右chから、やたらでっけえ音でギターが入ってきます。で、そのままジャンカジャンカと右のギターが最後まで自己主張を止めません。ヴォーカルを傍らに追いやって、空気を読まずにやりたい放題で弾き続けます。目立ちたがりなギタリストの豪気な振る舞いがたまらねえ。
 B3は伴奏している人たちにめいっぱい華を持たせています。インスト・ナンバーにコーラスが添加されたようなトラック。ラス前の箸休めといったところ。
 B4はダイナミックでドラマティックなゴスペル・ナンバー。ザ・タイムスのパワフルな歌唱と、フィリーのゴージャスな伴奏陣が車の両輪となってアルバムの終盤を大いに盛り上げます。

 迷走しているようでもあり、新たなる可能性を模索し、できることなら再び音楽シーンのど真ん中に躍り出たい、なんて色気も感じられます。様々な思いや試みが行き交った結果、ちょっとゴチャゴチャしちゃいました。そんなB面です。
 ゆえに王道フィリー・サウンドを心ゆくまで味わいたい、という人には本作、あまりオススメできませんなあ。

 なお本稿を上げるにあたり、およそ20年ぶりにAll-4-OneのCDを聴いてみました。意外とええやないか。当時はそんなにいいとは思わなかったんだよな。

 久しぶりに聴いてみると、よさに気付くってこと、やっぱりあるんですね。みなさんも、ホコリをかぶったレコードやCDを聴き直してはいかがでしょう。思わぬ再発見があるかもしれませんよ。
★★★

Produced and Directed by Billy Jackson for Flower Pot Productions Corp.
Arranged by Richie Rome

Vocal Arrangements by Billy Jackson and The Tymes Themselves
George Williams: Lead Vocal
Albert Berry: Tenor 1st, 2nd
Norman Burnett: Tenor 2nd, Baritone
Wade Davis: Baritone
Jerry Ferguson: Tenor
Donald Banks: Bass

Musical Complements

Rhythm
TSONY (the Sounds of New York) Under the Outstanding Leadership of Bernard Purdie
Conducted by Billy Jackson
Bernard Purdie: Drums
Karl Chambers: Drums
George Devins: Percussion, Vibes
Billy Jackson: Percussion
Ray Barretto: Congas, Timbales
Paul Griffith: Keyboards
Richie Rome: Keyboards
Larry "Bongo" Washington: Percussion, Congas
Carl Lynch: Guitar
Cornell Dupree: Guitar
Wilbur Bascombe: Bass

Strings and Horns
TSOP (the Sound of Philadelphia) Under the Celebrated Leadership of Don Renaldo
Richie Genovese: Bass Trombone
R. DeLillo: Trombone, Euphonium
Rocco Bene: Trumpets
Bob Hartzell: Trumpets
Strings: C. P. Reeves, A. Barone, C. A. Apollonia, J. Chudnow, D. A. Barnett, Larry Gold, V. Pignotti, John Faith (Flutist), A. Singagoga, R. DiStephans, R. Malizia, J. D'Onofrio

Background Vocals
Isabel Coles
Edna Holt
Billy Jackson
Barbara Ingram (Spoken Word on A2)
Deborah Stockton
Evette L. Benton
Carla L. Benton (Special Vocal Effects)
Rap Material on A2: Luz Rivera
Rap Material on B4: Billy Jackson
Rap Material on A3: George Williams

Recorded at
Record Plant Recording Studios, New York
RCA Studios, New York
Sigma Sound Studios, Philadelphia
Recording Engineers
Sigma Sound: Joe Tarsia, Jay Marks, Kenny Present, Don Murray, Carl Parulo and the Entire Sigma Sound Stuff of Assistants
RCA: Dick Baxter and Assistant Tom Brown
Record Plant: Shelly Yakus, Jay Messina
Re-Mixing Engineer
Don Murray, Except B4 Joe Tarsia

A Tom Moulton Mix

Photos: Nick Sangiamo
Design: J. J. Stelmach

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