2018/07/17

Steps Ahead / Modern Times ('84)

A1SafariB1Radio-Active
A2OopsB2Now You Know
A3Self PortraitB3Old Town
A4Modern Times
 なぜ、フュージョンの中古レコードは、安値で叩き売られてしまうのでしょうか?
 本作を聴けば、その答えを察していただけるかもしれません。

 80年代に、シンセサイザーは高度に発達しました。
 電化ジャズからフュージョンに流れてきたミュージシャンは新しモノ好きが多かったようで、これに飛び付いたのです。シンセの機能的な制約がどんどん撤廃され、あんなこともできる、こんなこともできる、そういう新鮮な喜びが彼らを大いに刺激したことは、想像に難くありません。

 しかし「できるからやる」ということと、音楽的な必然性はどうやら別のところにあるようで、何でもかんでもシンセを大々的に導入すると、途端にそっけない音になります。
 それに、いくら当時最先端とはいえ、シンセサイザーの技術は日進月歩です。数年すれば古臭い音になってしまいます。
 新しモノをどんどん取り入れるというフュージョン特有の開かれた気風が、結果的に彼らがいちばん嫌う「ダサい」音にそのまま一直線です。フュージョンというジャンルが構造的に内包する、呪われた宿命とでも言いましょうか。

 ロックやソウルの名盤といったエヴァーグリーンの正反対に位置するため、中古レコードの価値は必然的に低くなります。
 タマ数の多寡が価格を決める、という中古レコードの法則がジャンル丸ごと無視され、珍しい盤やCD化されていないアルバムでさえも、容赦なく叩き売られています。

 拙ブログにフュージョンが頻出するのは、言うまでもなくその安さゆえ。ずいぶんいろいろ買ってしまいましたよ。本当にありがとうございました。

 もちろん本作も、安値で叩き売られていたのを拾いました。うんざりするほどシンセ、シンセでとにかく依存度が高い。Synthi-Vibeっていったい何ですかマイニエリさん。

 そんな中、B2"Now You Know"の生ピアノが心を打ちます。シンセサイザーの音の壁を突き破る生ピアノ。不易と流行のクロスオーヴァーはまさしくフュージョンです。
 ビル・エヴァンスに傾倒し、生ピアノをやさしく歌わせることに人生の大半をつぎ込んだウォーレン・バーンハートが、ここで気を吐きました。

 シンセサイザーがどれだけ技術的に発展しようとも、生ピアノにはなれません。生ピアノがこの世から滅んで消えてしまうこともあり得ません。
 考えてみれば当然のことを、改めて思い知らされる入魂のピアノ・ソロであります。
★★★

Warren Bernhardt: Keyboards
Eddie Gomez: Bass
Peter Erskine: Drums, Percussion and DMX
Michael Bercker: Tenor and Soprano Saxophone
Mike Mainieri: Vibes, Marimba and Synthi-Vibe

With Guest Musicians
Chuck Loeb: Guitar on B2
Craig Peyton: Oberheim Systems Sequence Programming
Tony Levin: Stick on B3

Craig Peyton: Synthesizers, DMX Drums, Pro 1 Bass on B1

B1 Mixed by Nelson Cruz & Roddy Hui at Greenstreet Studios, Basic Track Recording on B3

A1 Mixed at Right Track Studios, N. Y.
A3 Mixed at RPM Studios, N. Y.
Mastered by Greg Calbi at Sterling Sound
Additional Synthesizer on A1 by Michael Brecker
Additional Synthesizer on A2, A3 and B3 by Michael Mainieri

Recorded and Mixed by James Farber
Recorded at Skyline Studios
Mixed at Skyline Studios and Power Station, New York City, January / February 1984
Assistant Engineers: Arthur Payson, Scott Ansell, Dave Greenberg, Jeff Hendrickson, Moira Marquis, Mike Krowiak, Garry Rindfuss
Art Direction: Bob Defrin
Photography: David Michael Kennedy
Oil Painting: “Departure” by Orsini

Produced by Steps Ahead
Production Coordinator: Christine Martin

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