2018/07/17

Steve Gadd / Gaddabout ('84)

スティーヴ・ガッド / ガッド・アバウト
A1Gaddabout
ガッド・アバウト
B1The Duke
ザ・デューク
A2My Little Brother
マイ・リトル・ブラザー
B2Lucky 13
ラッキー13
A3Montauk Moon
モントーク・ムーン
B3Leavin' Tomorrow
リーヴィング・トゥモロウ
 このドラマーの名前は、あらゆるジャンルの、たくさんのアーティストのアルバムで目にします。
 ニューヨークのレコーディング・スタジオで、アルコールとドラッグを燃料に、春夏秋冬、来る日も来る日もドラムを叩いて叩いて叩き続け、星霜を重ねた男です。

 スタジオ・ドラマーでは、おそらく最高のギャラを要求します。それでもアーティストやプロデューサーの引く手あまたなのは、よい仕事をするから。
 そして、ミュージシャンのクレジットにこの男の名前が載ると、そのアルバムにハクが付き、ありがたがられるからです。

 それゆえ、実際には別のドラマーが叩いているのに、クレジットには彼の名前が載ったりすることもあるとか。
 中国産のレタスを茨城産と偽って表示するようなもので、けしからんことですね。まあそれくらい、ネームヴァリューのあるドラマーなわけです。

 いつしか彼は、スティーヴ・ゴッド(神)と崇められ、世界中のドラマーの尊敬と憧れの対象となりました。

 時は80年代。
 栄華を極めつつあったバブル経済のジャパン・マネーが、投機の対象を求めてニューヨークへと注がれていた頃。

 スタジオに引きこもってコツコツ仕事をしていた職人ドラマーのもとを、ポケットを札びらでパンパンに膨らませた東洋のバブル紳士が訪れます。彼はゴッドに気前よくサケを振る舞い、女を抱かせ、上等のブツを献納し、そしてゴッドの耳元に「リーダー・アルバムを作ってみないか」と囁くのでした。…というのは私の勝手な推測なんだが、いずれにせよこの『ガッド・アバウト』は日本人が主導して制作されたものらしいです。

 何せ有名なドラマーなので、リーダー・アルバムはそれなりに売れるだろう、というビジネス上の勝算は少なからずあったのでしょう。決して無謀な企画ではなかったと信じたい。

 しかしですよ、スティーヴ・ガッドの歌声を聴きたい人なんてどこにいるのでしょうか?
 このヴォーカル、あまりの恥ずかしさに、聴いているこちらのほっぺたのあたりが熱くなってきます。

 なお本作に参加しているキーボードのリチャード・ティーは、ガッドと「ブラザー」なのだそうです。
 血はつながっていなくても、強い絆で結ばれているということ。ちなみに、往年の映画スター若山富三郎と大木実は「兄弟」と呼び合う仲良しだったそうで、大親友を兄弟に見立てるのは世界共通なのかもしれません。

 A2「マイ・リトル・ブラザー」はそんな、美しい兄弟愛の結晶、と言いたいところですがベースの音がでかすぎる。
★★★

Steve Gadd: Drums, Vocal
Richard Tee: Electric Piano, Acoustic Piano, DX7
Jeff Mironov: Electric Guitar
Neil Jason: Electric Bass
George Young: Tenor Sax, Soprano Sax
Lew Soloff: Trumpet
Ronnie Cuber: Baritone Sax

Arranged by David Matthews

Produced by David Matthews
Executive Producer: Shigeyuki Kawashima
Assistant Producer: Carrol Gadd & Mattie Matthews
Recorded & Mixed by Michael Farrow
Assistant Engineers: Scott James, Stan Wallace, Chaim Zegel & Michael Maxwell
Mastering Engineer: Akira Makino
Recorded at A&R Studio, N. Y., July, 1984
Recorded & Mixed at Warehouse Recording Studio, N. Y., Aug, 1984
Art Direction by Shogo Yamaguchi
Design by Shogo Design Room (Keiko Ogasawara)
Photos by Tatsuhiko Tanaka

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