2018/07/17

Steve Gadd / The Gadd Gang ('86)

A1Watching the River FlowB1Morning Love
A2StrengthB2Duke's Lullaby
A3Way Back HomeB3Everything You Do
B4Honky Tonk / I Can't Stop Loving You
 前作『ガッド・アバウト』がいくら凡打だったとはいえ、スティーヴ・ガッドのドラマーとしての名声は、零下40度のモービル1さながらに、いささかの影響もありません。

「この男の看板は、まだまだ使えるぞウッシッシ」
 そう考えた日本人のプロデューサーが、商魂あらたにガッドを核としたバンドを構想します。狙いは70年代に人気のあったフュージョン・バンド、スタッフの再現です。

 日本発のコメがまたしてもニューヨークの各所を飛び交い、豪華なミュージシャンをかき集めることに成功。元スタッフのメンバーまで馳せ参じてくれました。
 バンド名はザ・ガッド・ギャングに決定。何よりも重要だったのは、ガッドの名前を冠していること。ガッドがいるんだかいないんだかわからないバンド名では、コメの出し手が納得しなかったかもしれません。

 2人のドラマーが売りだったスタッフと違い、ガッド・ギャングのドラマーはガッドひとりだけ。ひとりでじゅーぶんですよ。わかって下さいよ。

『ガッド・アバウト』のような不発弾に終わらせないため、ウイスキーのテレビCMで彼らの演奏している様子を垂れ流すなど、各方面への根回しも忘れません。

 ロック、ソウル、ブルース、ジャズ、アーバン・ポップ。ガッド一味(ギャング)それぞれの多様な音楽経験がみっちり織り込まれ、アルバムの随所にウケる仕掛けが施された本作。フタを開けてみると、これが当たりました。

 当時、やや下火気味だったフュージョン界にとっては、久しぶりに華のあるバンドがデビューしたということもあり、大いにファンの話題になったものです。

 アルバム出してサヨナラだった『ガッド・アバウト』と違い、レギュラー・グループとして活動できたのも、ファンの後押しがあったからでしょう。もう1枚アルバムを出したし、コンサート・ツアーもやりました。
 多忙なガッドがこれほど注力できたのは、それだけこのグループに思い入れがあったからに違いありません。

 ただし別の見方もできます。
 当時はストック・エイトケン・ウォーターマンとか、そういう系の音楽が流行り出した頃。ドラマーがいなくても、レコードを作れる時代に突入してしまったのです。

 スタジオ・シーンにおけるドラマーの需要が、年々細りつつあった時期に当たるわけ。ガッドも、以前ほどたくさんの仕事をこなす必要がなくなったのではないでしょうか。グループ活動に精出す背景には、こういう事情があったのではないかって気がするのです。

 さて、本作の聴きどころはロニー・キューバーのブカブカと吹くバリトン・サックスが快調なA3。『ガッド・アバウト』で不完全燃焼だった感のあるリチャード・ティーも、ここでは本領を発揮しています。
★★★

The Gadd Gang
Steve Gadd: Drums, Congas, Percussions, Vocal
Cornell Dupree: Guitar
Eddie Gomez: Bass
Richard Tee: Steinway Piano, Rhodes Piano, Hammond B-3 Organ, DX-7, Vocal, Arrangement on B1

Ronnie Cuber: Baritone Sax on A1, A3 and B4

Horns on B4
Jon Faddis, Lew Soloff: Trumpets
Barry Rogers, David Taylor: Trombones
Michael Brecker, George Young: Tenor Saxes
Ronnie Cuber: Baritone Sax
Horns Arranged by Daved Matthews

Produced by Steve Gadd With Kiyoshi Itoh
Recorded and Mixed by Jay Messina
Assistant Engineer: Frank Pekoc
Mastering Engineer: Teppei Kasai
Assistant to Producer: Hiroko Seshimo
Recorded and Mixed at Record Plant Studios, NYC in June and August, 1986 by Using SONY 3324 Digital Recorder
Art Directed by Eiko Ishioka
Album Design: Makoto Kumakura
Photography: Tony Barboza

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