2026/02/06

Brook Benton / Makin’ Love Is Good for You ('77)

A1Let the Sun Come OutB1Til' I Can't Take It Anymore
A2EndlesslyB2I Keep Thinking to Myself
A3A Lovers QuestionB3Better Times
A4Lord You Know How Men AreB4Makin' Love Is Good for You
A5I Love HerB5There's Still a Little Love Left in Me
「往年の名歌手が、ディスコ・ブームに歩み寄った」というアングルが大好きな私。
 なので本作は、まさに来るべくして私の手元にやって来たのであります。

 ごらん下さい。歯が、白いです。
 フツーに生きているフツーの人の歯って、白に近い黄色か、黄色に近い白になると思うのですよ。
 それがこの白さ。白い。白すぎる。

 何と表現したらよいでしょうか、ふっとわき起こるこの違和感。

 例えるなら、90年代のUSポルノ女優たち。まるでリンゴでも入っているかのようなシリコン乳に、いやいや大きければいいってもんじゃないでしょと諭したくなった気分に近いような。

 あるいは、おふくろさん騒動の真っ只中、取材陣のインタビューに応える森進一。60過ぎのおじいちゃんなのに、お肌ぷるぷるのつやつや。アンチエイジングをがんばりまくって、スーパーナチュラルなお顔になっていました。みなさんあれを見たとき「うわー何じゃこりゃ」と思いませんでしたか。返す刀で、ナチュラルな耳毛ボーボーの川内先生がとても好もしく見えちゃったりして。

 はたまた、スポーツニュースでインタビューに応える高梨沙羅選手。ん?ん?

 それにしてもこういった違和感、いったいどこから来るのでしょう。
 しかもその違和感、あまり居心地のよろしいものではありません。

 過酷な大自然を生き延びてきた太古の祖先たちが、今でも私たちの内側に宿っていて、サインを送っているのではないか、そう私は考えています。
 生き延びることが、唯一にして至上の目的だった彼らにとって、生き延びるためによいこと、必要なことには「快」のサイン。そして生き延びるためによろしくないこと、都合の悪いことには「不快」のサイン。
 これら祖先のサインは、気分に出力されます。違和感の正体は、おそらく後者にあるのではないかと。

 祖先たちにとっては、「歯が命」でした。芸能人なんかよりもずっと。もしクロマニヨン人が歯を失ったら、それすなわち生存の脅威だったのです。歯がなければ、死にます。
 それくらい大切な歯を、自然の摂理に背くような色に変えてしまうことに対し、自己領域の深奥に潜む祖先が「それって生き延びるのにカンケーあるわけ?」となじっているのです。私たちがこういった違和感を上手くコントロールできないのは、その発生源が無意識下に隠されているからかもしれません。

 数年前、FM横浜の"Travelin' Light"という番組に、楠瀬誠志郎さんがゲスト出演したことがありました。
 司会の畠山美由紀さん、まるでひとりごとのように「いやあ、歯が、白いですね…」と漏らしていました。きっと畠山さん、常軌を逸した歯の白さに対するもやもやを、どうしてもこらえることができなかったのでしょう。なにせ楠瀬さん、歯が白いもんなあ。ほっとけないよ。あれはもうヤマザキ春のパンまつりでもらえるお皿の色。

 ともあれいい歌を聴かせてくれるなら、歯が紫色だろうと緑色だろうとどうでもいいことです。違和感にはフタでもしておけ。

 歯よりも気になったのが、アルバムのタイトル。
 ど真ん中に構えたキャッチャーミットにまっすぐ吸い込まれる直球さながらに、性行為を奨励しています。ヒーッ。

 叙上の如く、生き延びるために必要なことを「快」とするなら、性行為が快感をともなうのはいたって理にかなってますよね。こういうタイトルでアルバムをこさえてしまうのも、内なる祖先のサインに突き動かされるものを感じたのかもしれません。

 やはりというか、タイトル・チューンのB4がいちばんの聴きどころ。
 タイトでキレがあり、それでいて粘っこいリズム・セクションに乗って、ベントン氏が声を激しく張り上げ、朗々と、熱烈に、性行為を奨励しています。祖先ブーストもあってか、歌に思いがみなぎっています。これをA面のハナに持ってきてもよかったんじゃないかなあ。

 マイナー・レーベルからのリリースなので、「音がショボいのではないか」と心配される方もいるかもしれない。でもご安心下さい。本作、音がとてもいい。買ってきて最初に針を下ろした時、私はあまりの高音質に思わず座り直してしまったほどです。
 クリアーで、生々しく、ひとつひとつの音がくっきりしています。おっさんのリード・ヴォーカル、おばさん数人のコーラス、リズム・セクション、ホーン・セクション、そしてストリングスが絶妙のミキシングで積み重ねられ、ラテン・パーカッションの打撃音もほどよくポコポコしています。

 例えばスティーリー・ダンの"Aja"が録音名盤とされるのは、まず前提としてアルバムがたくさん売れ、多くの人々の耳に届いたことによるものです。しかし本作のように売れ行きが振るわなかったアルバムにだって、優秀な録音はあります。ただ、知られていないだけなのです。

 本作が世に出てから、かれこれ50年。その間、この高音質に気付いた者がどれだけいたのだろうか。ほとんどいなかったと思う。
 だから私に、言わせてもらおう。拙ブログにて、後世に伝えておこう。
 ブルック・ベントンの"Makin' Love Is Good for You"は、めっちゃ音がいいですよ、と。

 そして本作を紹介することを通じて、みなさん、とりわけ若い世代の人たちに、性行為を奨励したい。熱烈に奨励したい。
 祖先から受け取ったバトンを、次のランナーに渡す方法って、畢竟、性行為しかないんじゃないかって気がするから。
★★★

An Argon Production
Produced by Clyde Otis
Leroy Butler: Executive Producer

A3, A4, A5, B1, B2, B5
Arranged & Conducted by James Smith
Rhythm Arrangements by “Stuff”

A1, A2, B3, B4
Arranged & Conducted by David Wofford & Nat Adderley, Jr.
String Arrangements by Nat Adderley, Jr.
Horn Arrangements by David Wofford
Rhythm Arrangements by “Buckwheat”

Vocal Arrangements by “Tasha Thomas”
Concertmaster: David Nadien

Recording Engineers: Malcolm Addey & Harvey Goldberg
Mixing Engineer: Harvey Goldberg
Mastering Engineer: Joey Brescio
Recording at Bell Sound Studios & Mediasound Studios in New York

Album Design and Cover Photo by Bob Muller / Idea Plant Inc.

0 件のコメント: