
A1 | Can You Read My Mind (Love Theme From "Superman") | B1 | I'm Happy Just To Dance With You |
A2 | In Too Deep | B2 | Different Worlds (Theme From the Paramount TV Series "Angie") |
A3 | Very Special Love | B3 | Life's a Long Way To Run |
A4 | Can't Take My Eyes off You | B4 | He's a Rebel |
A5 | Carolina Moon | B5 | Yes, I'm Ready |
CDとLP、どちらが音がよいのか。
この40年、ずっと続いている論争です。いまだに終結していません。
ただし論争の参加者たちは年々高齢化し、世代の新陳代謝が進んでいないため、そう遠くない未来に全員死滅して終了するでしょう。おそらく結論の出ないまま。
私の意見はハタチの頃からずっと変わりません。CDの方が、音はよい。
これを公言するとLP支持派から「糞耳の持ち主」認定されてしまうんだよね。でもそうなんだから仕方ない。
ふだんLPばかり聴いている私でも、こればっかりは認めざるを得ません。
単に良し悪しだけの比較なら、CDの方がよい。間違いない。
ところが50~70年代にLPでリリースされたアルバムをCD化すると、そのCDがロクな音質じゃないってことは間々あります。でもそれってCD化の工程がヘボかったというだけで、決してCDというメディアのポテンシャルが劣悪だからではないと思う。
今回はそういうお話です。
『ポセイドン・アドベンチャー』と『タワーリング・インフェルノ』、大作映画のテーマ曲を連投したモーリン・マクガヴァンは、パニック映画の歌姫として一世を風靡します。しかし栄華は続かずその後じわじわと失速、70年代も後半に入るとすっかり「過去の人」に落魄してしまったのでした。
心機一転して79年、古巣の20世紀レコーズからマイク・カーブのレーベルへと移籍します。マイケル・ロイド率いるカーブ・レコーズのチームと組み、夢よ栄光よもう一度とふんどし締め直して臨んだアルバムが本作です。
いかにもこのプロデューサーらしい、カラッとした70'sポップスにまとまっています。こういうワクワクする雰囲気、私は好きですよ。
ただしモーリン・マクガヴァンのしみったれた持ち味(いい意味で)を封印してしまいました。プロデューサーがアルバムの空気を統一するため、あえて入れさせなかったのでしょう。
ひとまずイメチェンは成功。でも昔からのマクガヴァンのファンには、一本調子でエモーションの足りないアルバムに思えるかもしれません。
私のお気に入りB2は、TVシリーズの主題歌です。『アンジー』という、身分違いの男女の恋愛コメディらしい。恋するふたりの住んでいる世界が違うので、"Different Worlds"というタイトルなのね。
TVのタイアップ効果もあって、このシングルはけっこう売れたようです。レーベル移籍は吉と出ましたな。
本作のジャケットは、とても美しい。上の画像ではそれを伝えられなくて残念です。できることなら現物を手に取って、じっくり眺めていただきたい。
もの憂げに曇天を見つめるマクガヴァンさんの背後は窓ガラスで、そこに雨滴が付いてキラキラしています。これがビューティフルなことこの上ない。
そして本作ジャケットのいちばんの見どころはこれじゃ。

こんな際どい写真を撮られてしまったマクガヴァンさん。レーベル移籍直後という弱い立場で、断れなかったのかもしれませんね。
大手事務所から独立した途端に濡れ場で脱いだ水野美紀みたいなもんか。
キャンディ・ステイトンの"Chance"と同様、おっぱいチラ見せで1枚でも多くレコードが売れるもんならやってやるよ!という燃える商魂を感じます。まさに「裸一貫から出直す」その意気やよし。
やがて歳月は流れて90年代、音楽メディアの主流はLPからCDへと変遷します。ちょうどその頃、70'sポップスを再評価しようという機運が高まってきました。
70年代の名盤がドカドカとCD化される時流に乗って、めでたく本作もCDでリイシューされることになったのです。

CD化に際して変更されたのは主に下記の通り。
とりわけ4つめはひどい。いったいどこを見ているんだ、お前の目は背中についているのか、と担当者を叱責したくなります。おまけにLPジャケットを美しく飾り立てたなんとなくクリスタルな雨滴が、CDサイズに縮小されたらフケのようになってしまいました。台無しや。
本作のLPとCD、両者を聴き比べると、LPの圧勝。CDの音はしょぼいです。
しかしこの比較を以て、LPの方がCDよりもメディアとして優秀なのだ、と断ずるのはちょっと待ってくれませんかね。
このCD化は90年頃にされたもよう。なのでマスターの磁気テープは、それほど劣化していなかったのではないか。せいぜい消費期限の次の次の日に食べるヤマザキのパンみたいなもので、気にする人は気にするかも、でもたいていの人は普通に食っちまいます、って感じ。
だからCD化に携わったスタッフが、もうちょっと心血を注いでくれたら、おっぱいポロリで挑んだマクガヴァンの覚悟を慮ってくれたら、高音質のCDをこさえることだって可能だったと思うのです。
これは本件に限ったことではなくて、アナログ時代の膨大なレガシーはかなりの割合で、LPの音質に遠く及ばない、ダメダメなCD化をされてしまいました。そういうCDが大量にリリースされ、世の中に出回っているのです。
ほとんどの人がハズレを引く商店街の福引みたいな状況にあって、CDの音なんてクソじゃん、という民草の嘆きが定説としてひとり歩きをしたのではないかなあ。
CDの規格が優れているのは、間違いないのです。アナログ時代は切り離して考えるべきでしょう。
ほぼ完全にCDへ移行した90年代半ば以後、CD制作にかかる機材や人材が成熟してからのCDは、そりゃもう大した音質ですよ。宇多田ヒカルの1stなんてすごかったじゃないですか。ヒト・モノ・カネが回り始めてようやく、CDに秘められた技術の真価が発揮されるに至ったのであります。
音質がよくて、取り扱いだってカンタン、おまけに場所もとらない。CDはいいことずくめです。
CDの優位をこれだけ認める私なのに、日常的にはLPばかり聴いています。音楽を聴こうとして私が手に取るメディアは、いつだってLPなのです。
どうしてかな、と私は常日頃から疑問に思っておりました。
先月、ヤマザキのパンを咥えながら朝刊を読んでいたら、もしかしたらこれが答えかもしれない、という記事を見つけました。
平成初期に大ブームになった「たまごっち」の誕生秘話を、当時の関係者が述懐する、そういう内容の記事です。
たまごっちの生みの親である横井昭裕氏が、大成功の理由をこう語っています。
「生き物はかわいさが2割で、残る8割の面倒くささが愛情につながる。たまごっちの魅力は、この8割の中にあった」(読売新聞 2025/01/12 p.24)
8割の面倒くささ。
これだ。これが答えだ。私がLPに耽溺する理由。
面倒くささは、忌避したり排除する理由にはなりません。むしろその面倒くささにこそ、取り憑かれてしまうのです。
LPの面倒くささに対峙すること幾星霜、私は骨の髄までLPのトリコになっていました。LPさえあれば、CDなんかなくったって生きていけるッ!
もちろんそんな私の個人的な事情は、CDとLP、どちらが音がよいのか問題の前には何の意味もありません。
だから何度でも言うよ。CDの方が、音はよい。
この40年、ずっと続いている論争です。いまだに終結していません。
ただし論争の参加者たちは年々高齢化し、世代の新陳代謝が進んでいないため、そう遠くない未来に全員死滅して終了するでしょう。おそらく結論の出ないまま。
私の意見はハタチの頃からずっと変わりません。CDの方が、音はよい。
これを公言するとLP支持派から「糞耳の持ち主」認定されてしまうんだよね。でもそうなんだから仕方ない。
ふだんLPばかり聴いている私でも、こればっかりは認めざるを得ません。
単に良し悪しだけの比較なら、CDの方がよい。間違いない。
ところが50~70年代にLPでリリースされたアルバムをCD化すると、そのCDがロクな音質じゃないってことは間々あります。でもそれってCD化の工程がヘボかったというだけで、決してCDというメディアのポテンシャルが劣悪だからではないと思う。
今回はそういうお話です。
『ポセイドン・アドベンチャー』と『タワーリング・インフェルノ』、大作映画のテーマ曲を連投したモーリン・マクガヴァンは、パニック映画の歌姫として一世を風靡します。しかし栄華は続かずその後じわじわと失速、70年代も後半に入るとすっかり「過去の人」に落魄してしまったのでした。
心機一転して79年、古巣の20世紀レコーズからマイク・カーブのレーベルへと移籍します。マイケル・ロイド率いるカーブ・レコーズのチームと組み、夢よ栄光よもう一度とふんどし締め直して臨んだアルバムが本作です。
いかにもこのプロデューサーらしい、カラッとした70'sポップスにまとまっています。こういうワクワクする雰囲気、私は好きですよ。
ただしモーリン・マクガヴァンのしみったれた持ち味(いい意味で)を封印してしまいました。プロデューサーがアルバムの空気を統一するため、あえて入れさせなかったのでしょう。
ひとまずイメチェンは成功。でも昔からのマクガヴァンのファンには、一本調子でエモーションの足りないアルバムに思えるかもしれません。
私のお気に入りB2は、TVシリーズの主題歌です。『アンジー』という、身分違いの男女の恋愛コメディらしい。恋するふたりの住んでいる世界が違うので、"Different Worlds"というタイトルなのね。
TVのタイアップ効果もあって、このシングルはけっこう売れたようです。レーベル移籍は吉と出ましたな。
本作のジャケットは、とても美しい。上の画像ではそれを伝えられなくて残念です。できることなら現物を手に取って、じっくり眺めていただきたい。
もの憂げに曇天を見つめるマクガヴァンさんの背後は窓ガラスで、そこに雨滴が付いてキラキラしています。これがビューティフルなことこの上ない。
そして本作ジャケットのいちばんの見どころはこれじゃ。

こんな際どい写真を撮られてしまったマクガヴァンさん。レーベル移籍直後という弱い立場で、断れなかったのかもしれませんね。
大手事務所から独立した途端に濡れ場で脱いだ水野美紀みたいなもんか。
キャンディ・ステイトンの"Chance"と同様、おっぱいチラ見せで1枚でも多くレコードが売れるもんならやってやるよ!という燃える商魂を感じます。まさに「裸一貫から出直す」その意気やよし。
やがて歳月は流れて90年代、音楽メディアの主流はLPからCDへと変遷します。ちょうどその頃、70'sポップスを再評価しようという機運が高まってきました。
70年代の名盤がドカドカとCD化される時流に乗って、めでたく本作もCDでリイシューされることになったのです。

CD化に際して変更されたのは主に下記の通り。
- タイトルが"Greatest Hits"になった
- 曲順が変わった
- B3が消えて「モーニング・アフター」がねじ込まれた
- 写真からおっぱいがトリムされた
とりわけ4つめはひどい。いったいどこを見ているんだ、お前の目は背中についているのか、と担当者を叱責したくなります。おまけにLPジャケットを美しく飾り立てたなんとなくクリスタルな雨滴が、CDサイズに縮小されたらフケのようになってしまいました。台無しや。
本作のLPとCD、両者を聴き比べると、LPの圧勝。CDの音はしょぼいです。
しかしこの比較を以て、LPの方がCDよりもメディアとして優秀なのだ、と断ずるのはちょっと待ってくれませんかね。
このCD化は90年頃にされたもよう。なのでマスターの磁気テープは、それほど劣化していなかったのではないか。せいぜい消費期限の次の次の日に食べるヤマザキのパンみたいなもので、気にする人は気にするかも、でもたいていの人は普通に食っちまいます、って感じ。
だからCD化に携わったスタッフが、もうちょっと心血を注いでくれたら、おっぱいポロリで挑んだマクガヴァンの覚悟を慮ってくれたら、高音質のCDをこさえることだって可能だったと思うのです。
これは本件に限ったことではなくて、アナログ時代の膨大なレガシーはかなりの割合で、LPの音質に遠く及ばない、ダメダメなCD化をされてしまいました。そういうCDが大量にリリースされ、世の中に出回っているのです。
ほとんどの人がハズレを引く商店街の福引みたいな状況にあって、CDの音なんてクソじゃん、という民草の嘆きが定説としてひとり歩きをしたのではないかなあ。
CDの規格が優れているのは、間違いないのです。アナログ時代は切り離して考えるべきでしょう。
ほぼ完全にCDへ移行した90年代半ば以後、CD制作にかかる機材や人材が成熟してからのCDは、そりゃもう大した音質ですよ。宇多田ヒカルの1stなんてすごかったじゃないですか。ヒト・モノ・カネが回り始めてようやく、CDに秘められた技術の真価が発揮されるに至ったのであります。
音質がよくて、取り扱いだってカンタン、おまけに場所もとらない。CDはいいことずくめです。
CDの優位をこれだけ認める私なのに、日常的にはLPばかり聴いています。音楽を聴こうとして私が手に取るメディアは、いつだってLPなのです。
どうしてかな、と私は常日頃から疑問に思っておりました。
先月、ヤマザキのパンを咥えながら朝刊を読んでいたら、もしかしたらこれが答えかもしれない、という記事を見つけました。
平成初期に大ブームになった「たまごっち」の誕生秘話を、当時の関係者が述懐する、そういう内容の記事です。
たまごっちの生みの親である横井昭裕氏が、大成功の理由をこう語っています。
「生き物はかわいさが2割で、残る8割の面倒くささが愛情につながる。たまごっちの魅力は、この8割の中にあった」(読売新聞 2025/01/12 p.24)
8割の面倒くささ。
これだ。これが答えだ。私がLPに耽溺する理由。
面倒くささは、忌避したり排除する理由にはなりません。むしろその面倒くささにこそ、取り憑かれてしまうのです。
LPの面倒くささに対峙すること幾星霜、私は骨の髄までLPのトリコになっていました。LPさえあれば、CDなんかなくったって生きていけるッ!
もちろんそんな私の個人的な事情は、CDとLP、どちらが音がよいのか問題の前には何の意味もありません。
だから何度でも言うよ。CDの方が、音はよい。
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Produced and Engineered by Michael Lloyd for Mike Curb Records
Arranged by John D’Andrea
Tracks Engineered by Humberto Gatica and Michael Lloyd
Second Engineer: Jim Crosby
Mastered at Artisan by Bob McCloud
Musician Contracting: Shaun Harris
Background Vocals by The Pearl Divers
Management: Marcia Day / Day 5 Productions
Art Direction: Peter Whorf
Design: Brad Kanawyer
Photography: Luis Lizarraga
Arranged by John D’Andrea
Tracks Engineered by Humberto Gatica and Michael Lloyd
Second Engineer: Jim Crosby
Mastered at Artisan by Bob McCloud
Musician Contracting: Shaun Harris
Background Vocals by The Pearl Divers
Management: Marcia Day / Day 5 Productions
Art Direction: Peter Whorf
Design: Brad Kanawyer
Photography: Luis Lizarraga
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