2023/06/12

John Bunch / Jubilee ('84)

A1JubileeB1Dream Dancing
A2Cincinnati SlickB2Celia
A3EmilyB3It's Love in the Spring
A4Night Mist BluesB4Struttin' With Some Barbecue
 私は、ジャズ・ギターが好きです。
 モダン・ジャズのコンボにどうしても必要、という楽器でもないせいか、花形であるトランペットやサキソホーンほど人数も、アルバム数も多くはありません。
 しかしジャズ・ギターならではのスイング感はかけがえなくて、好きな人にはたまらないものがあります。なるほど、根強いファンがいるわけです。

 ジャズ・ギターのトリオは主に、「ギター+ピアノ+ベース」の編成と、「ギター+ベース+ドラムス」がありますよね。
 前者ならタル・ファーロウの『タル』、後者だとバーニー・ケッセルの『ザ・ポール・ウィナーズ』あたりが代表例でしょうか。

 前者はギターとピアノのうち、どちらかひとりが発奮すればとりあえずアルバムとしては成り立ちます。もうひとりがちょっとやそっとノリ悪くても、何とかなってしまうものです。
 ところが後者は、ギタリストが不調だったり無気力だったりすると、そのアルバムは駄盤一直線です。ベーシストやドラマーがいっくら奮起してもあきまへん。

 なので後者の方が、死亡率はずっと高いような気がします。その一方で、もしギタリストが絶好調なら、名盤をモノにするのは後者の編成が有利なんじゃないかって気もする。
 よかれあしかれ、ギタリストの責任重大なのが後者。玉子をひとつのカゴに盛っている状態、とでも言えばいいのか。

 静かな夜に、でろーんとした演奏をじっくり聴きたい、そんな気分のときは断然、前者がいい。ドラムスがいない分、三者の親密にして緊密な雰囲気が濃厚に感じられます。

 本作はピアノが主人公のトリオ。編成はピアノ+ギター+ベースです。
 ジョン・バンチはすでに拙ブログで、ギター入りカルテットのアルバム"Slick Funk"を紹介しています。そこからドラマーを追っ払ったのが本作、と考えればちょうどいいでしょう。ギターも同じ人だし。

 ピアニスト名義のアルバムながら、ギタリストとは主従関係ではなく、五分の盃といったところ。
 そしてベーシストは、ふたりを乗せて走るタイヤです。安定感のあるぶっといタイヤで、凸凹の悪路だってびくともしません。
「ピアノ+ギター+ベース」の、あらまほしい三角形がここにあります。

 以前ジョージ・シアリングの"Light, Airy and Swinging"にて述べた通り、私は映画主題歌の"Emily"に夢中になってしまいました。その"Emily"があったからこそ、何のためらいもなく本作を購ったのです。
 A3はまさに期待通りで、美しいメロディに導かれて即興になだれ込むジャズメンの技芸に、ただただうっとりしてしまいます。

 全体的にチンタラしたムードの本作も、オーラスのB4で爆発しました。まあバーベキューとなれば、陽気なアメリカ人ならハッスルするでしょう。ダディクールとか言って。
 なお、どうやらbarbecueには肉便器といった意味もあるようです。どちらにしても肉なんだね。
★★★

John Bunch: Piano
Cal Collins: Electric Guitar
George Mraz: Bass

Recording Session Produced by Gus Statiras
March 1, 1977, Downtown Sound, New York City
Engineer: Fred Miller

Text by George Simon
Photograph by John Bunch
Album Art Direction and Graphics by Reg Stagmaier
Produced by George H. Buck, Jr.
Production Coordinator: Wendell Echols

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