2022/05/20

The Righteous Brothers / The Sons of Mrs. Righteous ('75)

A1Young BloodB1Substitute
A2Nobody but YouB2All You Get From Love Is a Love Song
A3Never Say I Love YouB3High Blood Pressure
A4Try AgainB4Is It Wrong
A5Sing LadyB5Just Another Fool
 ときにみなさん。
『野獣教師』というアメリカ映画、ご存知でしょうか。今から25年ほど前の作品です。

 主演はトム・ベレンジャー。かつて『プラトーン』で人気爆発した彼も、90年代後半になるとスターダムの下り坂にさしかかっていました。

 ベレンジャーが演じるのは傭兵のリーダー、シェイルです。CIAの下請けで、長年にわたり、さんざっぱら汚れ仕事を押し付けられてきました。
 キューバでの隠密作戦にあえなく失敗してしまい、雇い主から見捨てられ(当局は一切関知しない、という例のアレ)、「スピーク、ラーク」の呪文も功を奏することなく、率いていたチーム全員が死亡したことにされてしまうのでした。

 存在を抹消され、転職活動もままならず、無職中年になったシェイルは高校教師をしているガールフレンドの部屋に転がり込みます。ヒモかよ。

 専業主夫の生活になじんできたある日、彼女が職場の高校で大怪我をして入院してしまいました。どうやら生徒に暴行されたらしい。
 犯人を突き止めるため、シェイルは教員免許を偽造して高校教師になりすまし、まんまと高校に潜入します。ガールフレンドを襲ったクソガキどもを締め上げていくうち、学校に巣くう麻薬組織と対峙することになるのでした。

 いかにもB級アクションなお話でしょ。こんなオファーでも呑んでしまうベレンジャーさん好きだ。

 この映画のキモは、元傭兵の目を通して描かれる、底辺校の現実、これに尽きます。
 麻薬禍だけではなく、ティーンエイジャーの妊娠だとか、貧困の連鎖、ストリートにはびこる暴力や犯罪など、これでもかこれでもかと見せつけられる、現代アメリカの病巣。

 当初は彼女を襲った不良生徒にヤキを入れるつもりで高校に潜入したシェイルも、なんちゃって教師として教壇に立つ日々を重ねていくにつれ、さまざまな生徒と触れ合い、この現実に直面します。やがて、生徒たちを悪い大人から守ってやりたい、そう思い至るようになります。

 私が『野獣教師』を好きなのは、まさにこの部分。
 カネのためにさんざん人殺しをしてきた元傭兵が、ひとの心を取り戻すのです。

 生徒をかばった同僚教師が組織に殺され、いよいよシェイルは意を決します。かつての傭兵仲間を集め、麻薬組織を撃滅するための闘いをおっ始めました。
 ちっともカネにならない、しかも勝ったところで底辺校がひとつ救われるだけ、というしょぼい仕事に、ボヤきつつも参加する仲間たち。彼らも、カネではなく、義のために立ち上がったシェイルに共鳴したのです。

 クライマックスは深夜の校舎を舞台に、傭兵と麻薬組織の決戦です。
 ナイフに拳銃、サブマシンガンに狙撃銃、手榴弾からプラスチック爆弾まで、殺しのプロたちの技能見本市となっております。そこはB級アクションですからね。これがないと観客が納得しません。
 強大な麻薬組織を相手に、仲間をひとり、またひとりと失いつつも、シェイルはようやく黒幕を成敗しました。やれやれ、素手で殺っちまっただよ。

 ちなみに昨年、テレビ東京で『野獣教師』が放映された際は、この「素手で成敗」場面がカットされました。べつだん大流血シーンというわけでもなく、それほど過激な表現でもないのに、何ゆえカットするのでしょう。
 どういうことよテレ東さん?

 ともあれ、映画ファンのみなさんは『野獣教師』を見て、きっとお気付きになるでしょう。
 このストーリーの骨子が、『七人の侍』であることに。いや傭兵の数は7人じゃないんだけどさ。

 どうやら『七人の侍』は、アメリカ人たちのハートによほど深く刺さったのでしょうなあ。『荒野の七人』や『宇宙の7人』のようにリメイクを標榜した作品以外にも、『七人の侍』マインドを宿したB級アクションってけっこうありますよ。
 凄腕の寡兵が、カネのためでも、名誉のためでもなく、義侠心で多勢に挑む、というのは、洋の東西を問わず、心にグッとくる題材なのかもしれませんね。

 この映画には、もうひとつ、なりすましネタとしての妙味が加えられています。
 潜入捜査を描いた多くの作品、あるいは『デーヴ』や『ブルー・ストリーク』などにあるような、ニセモノがなりすますことによって、どんどんホンモノらしくなり、さらにはホンモノ以上に「らしく」なってしまう、という映画的モチーフね。
 シェイルはたしかに、ニセモノの教師でした。しかし、生徒を憂い、学び舎を守ろうと行動した彼は、間違いなく、ホンモノ以上に教師だったのです。

 さて、叙上のあらすじを読めば、この『野獣教師』という邦題がいかにトンチンカンか、おわかりいただけるでしょう。
 原題は"The Substitute"、これは代理教員のことです。サンキュー先生みたいなもんか。

 と、ここまで引っ張って引っ張って、ようやく、アルバムの話になりますよみなさん。
 substituteという名詞には、代わりの人(もの)、という意味があります。これをそのままタイトルにしたB1は、「オレがお前の恋人代わりになってやるぜ」と、パートナーのいる女性を口説いているのです。図々しいったらありゃしねえ。

 大好きな映画のことならいつまでも語り続けちゃう私でも、このアルバムについては話したいことがほとんどなかったりします。カーペンターズのファンなら、B2を聴いてオッ、と思うのでは。
★★★

Produced by Dennis Lambert and Brian Potter
Arranged and Conducted by Tom Sellers
Engineered by Joe Sidore
Recorded at Sound Labs, Hollywood, California
Mastered at Allen Zentz Mastering, Hollywood, California
Production Co-ordinator: Marsha Lewis
Executive Booking Agency: William Morris Agency

Musicians
Keyboards: David Paich, Tom Sellers, Dennis Lambert
Bass: David Hungate
Guitar: Dean Parks
Drums: Ed Greene
Percussion: Gary Coleman, Brian Potter, Dennis Lambert
Horns: Chuck Findley, Paul Hubinon, Ernie Watts, Tom Scott, Don Menza, Dick Hyde
Strings: Sid Sharp, Manny Moss

Singers
Ginger Blake, Julia Tillman, Maxine Willard, Carlena Williams

Horn Solo on B2: Tom Scott
Horn Solo on A1: Ernie Watts

Art Direction and Illustration: Richard Germinaro
Photography: Gene Brownell
Design: Big Cigar

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