2020/07/19

Dave McKenna / Giant Strides ('79)

A1If Dreams Come TrueB1Love Letters
A2Yardbird SuiteB2Cherry
A3WindsongB3Lulu's Back in Town
A4Dave's BluesB4Walkin' My Baby Back Home
A5I've Got the World on a StringB5The Underdog
 ソロ・ピアノのアルバムは、買うのをためらってしまいます。

 というのも30年ほど前、リッチー・バイラークというピアニストがソロ・ピアノを貫いたアルバムを買ってみたらクソつまんなかったのです。それ以来ソロ・ピアノは地雷のような気がして、恐ろしくて手を出せなかった次第。

 デイヴ・マッケンナという名前は、ズート・シムズのアルバムで見覚えがありました。この人なら大丈夫かな、と思い、ずっと忌避していたソロ・ピアノのアルバムに挑んでみる気になったのです。

 聴いてみると、安定感たっぷりのピアノ・プレイ。
 左手がリズミカルに和音を叩き、右手がインプロヴァイズします。伴奏とソロがひとりで完結する、まさにワンマン・オーケストラ。カラシニコフ博士に「俺は一人の軍隊じゃー」と言い放ったゴルゴ13のようです。

 軽妙にしてエレガントなA5が聴きどころ。たった10本の指で、ここまで多彩な表現ができるのかと驚かされます。
 ソロ・ピアノって、こんなに楽しいんだ。地雷でも何でもないじゃん。

 この時期のコンコード・ジャズはスタッフや技術に恵まれ、安定した高音質を実現していました。なのに本作、音質的にはちょっとしょぼい。
 でもこれはおそらく、意図したサウンド・デザインのような気がします。

 マッケンナはその人生の大半を、バーやホテルのピアノに腰かけて、本作のようにひとりで弾いてきました。
 コンサート・ホールやレコーディング・スタジオにあるような、上等で由緒正しいピアノではありません。安物のアップライトで、キーはガタガタ、チューニングも狂ってたりします。
 そういうピアノを活かすこと、歌わせること、それがマッケンナの道だったのです。

 音質を少しばかりモヤモヤさせることで、本作は、そんなマッケンナの日常を浮き彫りにします。人生劇場の観客になれるのです。「馬の口とらえて老を迎える者」と同じように、ああ、マッケンナも旅人だったのだな、そんなことさえ考えてしまいました。
★★★

Produced by Frank Dorritie, Concord Jazz, Inc.
Recorded at Coast Recorders, San Francisco CA May 1979
Remixed at PER, San Francisco, CA
Recording and Remix Engineer: Phil Edwards
Mastered at The Mastering Room, San Francisco, CA
Cover Photo: Darryl Pitt / Encore
Art Direction: DH Studio

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