2020/07/04

Dave Grusin Lee Ritenour / Harlequin ('85)

デイブ・グルーシン&リー・リトナー / ハーレクイン
リオの碧い風にさそわれて……
USAサウンド・シーンのナイス・ガイ2人の初の共作アルバム。
時の人、イバン・リンスの唱=そのブラジリアン・フレイバーと
アコースティック感覚に、夏のときめき。
A1Harlequin
ハーレクイン
B1Cats of Rio
キャッツ・オブ・リオ
A2Early A.M. Attitude
アーリーA.M.アティテュード
B2Grid-Lock
グリッド・ロック
A3San Ysidro
サン・ユーシドロ
B3Silent Message
サイレント・メッセージ
A4Before It´s Too Late
ビフォア・イッツ・トゥー・レイト
B4The Bird
ザ・バード
 ハーレクイン。道化師という意味だそうです。

 私にとってハーレクインとは、女性向けの恋愛小説ですな。80~90年代は、書店の一角を占めていましたね。
 かつて新幹線で関西方面を行き来していた頃に、よく読んでいました。1冊おおむね75分の分量なので、ときおり車窓の風景を眺めつつ、ときおりボンヤリしつつ、パラパラとめくっていると、だいたい米原と京都の間くらいで読み終わるのです。
 毒にも薬にもならぬ、純粋な時間潰しとして、ハーレクインはもってこいでした。到着前に必ず最後まで読めちゃう文章の軽さも、ほどよかった。

 官能描写が激しいものもあれば、そうでないものもあり、中にはまったくないものまであって、そのへんは書店で宇能鴻一郎先生の著を手にする諸兄が期待するような世界ではありません。
 けっこうな数のハーレクインを読んだ私が気になるのは、官能描写ではなく、ヒロインと恋をする男性像ですな。

 ハンサムで筋肉質でお金持ち。
 これに尽きます。ついでに知性や教養もあり、さらには地位や家柄の高い場合も。

 たくさんの才能ある作家たちが、個性的な作風で競い合っているのがハーレクインの魅力。なのに恋のお相手だけは、まるでハンコついたように画一的です。なんでやねん。ハーレクインを発表の場とする以上、作家たちはかような男性像を恋愛の対象として描くことを呑まなければいけない、そんな掟があるのかもしれません。

 私がなんだかんだハーレクインを読んでしまったのは、けっして官能描写を求めていたからだけではなく、上記の男性像を裏切る作品に、いつか出会えるのではないか、そういう期待を抱いていたからです。
 素敵なヒロインが、不細工で貧乏な男性と恋をする。んで、官能描写。そんなハーレクインがあってもいいじゃないですか。

 しかしついぞ出会えませんでした。カ…カテエ…。かてえよハーレクイン。

 やがて関西方面を行き来することも、新幹線に乗ることもなくなってしまった私は、ハーレクインとすっかりご無沙汰です。もう20年も読んでないや。

 さて本作、デイヴ・グルーシンとリー・リトナーの共作アルバムです。

 目玉は何といっても、ブラジル人シンガー・ソングライター、イヴァン・リンスの起用。
 イヴァン・リンスはそれまでにも、音楽通やラテン好きの間でそこそこ知名度がありました。彼の才能を高く評価したリトナーがグルーシンを引き込み、全世界の音楽マーケットに向け、大々的にプロモートしたのです。

 リトナーの目に狂いはありませんでした。A1を聴いてみて下さい。どうですかこのせつないメロディ。まるで夕暮れ時にやさしく吹き抜けるそよ風のような、ポルトガル語の心地よい響き。
 ヴァースからコーラスに移ろう0:32あたり、どんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんどんと盛り上げるドラムスがたまらない。リンスと初顔合わせしたLAのミュージシャンたちも、この規格外のメロディ・メーカーに心酔していた様子がうかがえます。

 リンスが参加したのはA1とA4の2曲のみ。残りはリンス抜きのインスト・ナンバーです。
 2曲は少ないですよね。全曲参加とまではいかなくとも、もうちょっとリンスを聴きたい。聴かせてくれよう。

 あ。
 もしかしたらリトナーやグルーシンの真意はこれか。
 リンスをちょい見せだけしてリスナーの飢餓感をあおり、さらなるプロモーションに発展させようと絵を描いていたのかもしれません。んもー商売人ね。
★★★

Produced and Arranged by Dave Grusin / Lee Ritenour
Recorded and Mixed by Don Murray at Starlight Studios, Burbank, CA.
Assisted by Terry Bower, Terry Christian, David Cole
Additional Recording by Terry Bower, Josiah Gluck, David Leonard
Tracks Recorded at Sunset Sound, Hollywood, CA. and Capitol Recording Studios, Hollywood, CA.
Digital Editing by Joe Gastwirt at JVC, Hollywood, CA.
Midi Piano Recorded at Randy Goodrum’s, North Hollywood, CA.
Midi-Piano Programming by Randy Goodrum
Electronic Drum Programming by Harvey Mason and Don Grusin
Additional Synthesizer Programming by Marcus Ryles
Cover Design by Dario Campanile From His Original Oil Painting
Back Cover Photography by Ron Slenzak
Inner Photographs by Tom Farrington

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