2020/01/18

Robert John / Back on the Street ('80)

A1(So Long) since I Felt This WayB1Sherry
A2Hey There Lonely GirlB2Winner Take All
A3Just One More TryB3Hurtin' Doesn't Go Away
A4On My OwnB4Back on the Street Again
A5Give up Your LoveB5You Could Have Told Me
 ロバート・ジョンはかつて、「サッド・アイズ」という曲でビルボード・ホット100の1位に輝きました。
 ほんの一瞬、たったの一週とはいえ、アメリカ音楽界の頂に立ったのであります。

 これがどれだけの偉業であるか、ちょいと確認してみましょう。
「サッド・アイズ」が1位になった1979年、他にどんな曲が1位になっているのか、調べてみました。

ビー・ジーズ「失われた愛の世界」
「哀愁のトラジディ」
「ラヴ・ユー・インサイド・アウト」
ロッド・スチュアート「アイム・セクシー」
グロリア・ゲイナー「恋のサバイバル」
ドゥービー・ブラザーズ「ホワット・ア・フール・ビリーヴス」
エイミー・スチュアート「ノック・オン・ウッド」
ブロンディ「ハート・オブ・グラス」
ピーチズ&ハーブ「恋の仲直り」
ドナ・サマー「ホット・スタッフ」
「バッド・ガール」
「ノー・モア・ティアーズ」with バーブラ
アニタ・ワード「リング・マイ・ベル」
シック「グッド・タイムス」
ザ・ナック「マイ・シャローナ」
マイケル・ジャクソン「今夜はドント・ストップ」
ハーブ・アルパート「ライズ」
M「ポップ・ミューヂック」
イーグルス「ハートエイク・トゥナイト」
コモドアーズ「スティル」
スティクス「ベイブ」
ルパート・ホルムズ「エスケイプ」

 いやあ、何と凄まじいリストなのでしょう。ちなみにロバート・ジョンが首位に滑り込んだのは、「マイ・シャローナ」と「今夜はドント・ストップ」の間です。

「アメリカのチャートは、マグレやインチキでは絶対に1位になれない」と、以前ラジオでグッチ裕三さんは話していました。見て下さいよ。どれもこれもええ曲ばかり。グッチさんの言うことは、間違っていなかったのです。

 百鬼夜行のヒット街道で、これほどまでに強力な、かつ魅力的なライバルに伍して、チャートを制するのがどれだけ難儀であるか。
 いま一度、上のリストをよく見てほしい。各曲を脳内で再生しつつ見てほしい。こいつらとしのぎを削って、1位まで駆け上がったんですよ。ロバート・ジョンは。

 プロデューサーのジョージ・トービンは、「サッド・アイズ」の熱が冷めないうちに、二の矢、三の矢を放ってヒットを量産し、ロバート・ジョンをスターダムに押し上げようと画策しました。
 それが「サッド・アイズ」翌年に制作された、このアルバムです。

 有名曲(A2とB1)のカバーをシングル・カットし、てっとり早くヒットを狙ったのが悪手だったのか。あるいは上のリストが示すように、ビー・ジーズがさんざん流行っていた頃なので、世間のリスナーに「ファルセット声はもういらないです」な空気が流れていたのか。
 理由はよくわかりません。とにかく、期待したほどにはヒットしませんでした。一度はつかみかけたスターの座が、その手をするりと抜け、いくら手を伸ばしても届かない、宇宙の果てへと消え去ったのです。

 私としては、ヴィジュアル面が大いに気になるところ。ジャケット写真を拡大してみましょう。

 ロバート・ジョンは5.5頭身くらいかな。体格こそ違えど、ジョン・テンタのような顔をしています。
 MTV時代なら、いかにも苦戦を強いられそうな容姿です。しかし幸いと言うべきか、MTV時代が到来する前に、ロバート・ジョンの時代は終わっていました。

 売れなかったからといって、では本作がカスなのかというと、そうでもありません。
 ほぼ全編、ファルセットで歌い切っていますので、そういうのが苦手でなければ悪くないアルバムと言えます。

 似たり寄ったりの曲を並べて平板になってしまったA面より、B面の方がだんぜんいい。
 ファルセットから解き放たれたタイトル曲B4から、静かなエモーションをたたえたB5にかけての、終盤の流れが聴きどころ。アルバム最後に印象的な曲を配してシメるのは、同時期の『女はドラマティック』といっしょ。ジョージ・トービンのいつもの手口です。
★★★

Produced by George Tobin in Association With Mike Piccirillo for George Tobin Productions Inc.
Arranged by George Tobin and Mike Piccirillo

Drums: Craig Krampf, Ed Greene on A2
Bess: Scott Edwards, Wade Short on A2
Guitars: Mike Piccirillo, Bill Neale Played the Solo on A3
Keyboards: Stewart Levin, Bill Cuomo on A3 and B4
Synthesizers: Mike Piccirillo
Sax: Joel Peskin
Harp: Katie Kirkpatrick
Bells: Mark Zimoski
Electric Sitar: Mike Piccirillo
Background Vocals: Robert John and Mike Piccirillo, Edna Wright and Darlene Love on A2, George Tobin Bass Vocal on B1
Horn Arrangements: Gary Scott on A1 and B2

Recording Engineers: Mark Wolfson and H. Lee Wolen
Mixed by George Tobin and Mike Piccirillo
Recorded and Mixed at Studio Sound Recorders, North Hollywood, California
Production Coordinator: Lisa Marie
Direction for GTP: Gary Goetzman
Art Direction & Design: Bill Burks
Photography: Jennifer Griffiths

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