2019/12/09

Solar Heat ('79)

A1Just Another SongB1Magic in My Mind
A2I'm the Real ThingB2Let's Go Dancing
A3Woman in My LifeB3Honey, I Love You
A4I'm the ManB4Ridin' High on the Future
 1979年は、音楽ファンにとってなかなか面白い年です。

 ディスコ・ブームに手詰まりの感じられつつあったこの年、アーティストたちはおそらく、マンネリを打破する次の一手を探っていたことでしょう。

 例えばドナ・サマーは同年、「ホット・スタッフ」の伴奏者にジェフ・スカンク・バクスターを起用します。素っ頓狂、かつスリリングなスカンクのギター・ソロをフィーチャーした「ホット・スタッフ」は、特大ホームランとなってドナにグラミー賞の最優秀ロック・ヴォーカル・パフォーマンス賞をもたらしました。
 ディスコとロックの幸福な結婚というわけです。

 もちろん、ドナのような大物アーティストだけではありません。この年、無名の小物たちも80年代を見据え、新しい音楽を生み出そうと様々な試みに走りました。作り手たちが混迷し、試行錯誤する様子を後世ならではの上から目線で楽しめる大人の音楽ファンにとって、1979年はムチャな音楽がいっぱい行き来する潮目、豊かな漁場となっております。

 ソーラー・ヒートは、ボー、ワーデル、ノリスのウィリアムズ3兄弟からなるディスコ・グループ。アルバムは1979年にリリースされたこの1枚だけ。
 音楽シーンに突如現れ、次の瞬間には消えたシャボン玉です。

 ジャケットをごらん下さい。マグマとともに噴き出す裸身の女性。巧妙な逆光コントロールにより、女性の乳首は黒つぶれでよく見えません。
 チープなエロジャケに突き動かされるものを感じ、せっかくだから買ってしまった本作。聴いてみると、いたって凡庸なアルバムです。

 聴きどころは何といってもA4"I'm the Man"でしょうな。
 場違いなほどの野蛮なロック・ギターが、いきなり斬り込んできます。何なんだこれは。まるで高級レストランに迷い込んだルンペンのようです。場違いをものともせず、音楽を乗っ取り、支配する歪んだエレキの音。ディスコ音楽のマナーを歯牙にもかけない、このB級ロックな振る舞い、たまらんものがあります。

 ソーラー・ヒートは本作で、プログレッシヴにしてアグレッシヴなディスコ音楽を引っさげ、「80年代はオレたちの時代だ!」なんつって大いに気勢を上げたことでしょう。
 しかしただひとり、長兄ボー・ウィリアムズだけは、周囲の狂騒を醒めた目で見ていました。

 ボーはディスコ音楽に限界を感じていたのです。このままでは、ソーラー・ヒートはいずれ行き詰る。80年代音楽シーンを乗り切るには、どうすればいいのだろう…。

 悩んだボーは、苦渋の決断をしました。弟たちを見捨て、自分だけが生き残ることを選択したのです。

 この判断は間違っていなかったようで、ボー・ウィリアムズは80年代にソロ・アルバムを数枚リリースし、ブラコン・ファンにちょっとは知られた存在となりました。
 一方、ポイ捨てされた2人の弟は、音楽界から足跡がぷっつり途絶えます。音楽が激しく変容したあの年、1979年を最後に。
★★★

Produced by John J. Barnes, Jr. Except A1 and A2 Produced by John J. Barnes, Jr., David Blumberg & Gary Zekley
Executive Producer: Charles V. Roven for Pure Energy Productions

Arranged by John Barnes Except A1 Arranged by David Blumberg

Recorded at One Step Up Recording Studios, Los Angeles, CA
Engineers: Larry Miles, Mark Curry on A1 and A2
Mixing Engineers: Jack Roubin, Larry Miles on A1 and A2
2nd Engineers: Nicki Turner, Dan Everhart
Mastered at ABC Recording Studios, Inc., Los Angeles, CA by "Lanky" Linstrot

Solar Heat
"Bo" Williams: Lead Vocals
Wardell Williams: Lead Vocals on A3
Norris Williams

Keyboards: Electric Ivory Experience (John Barnes, Bob Robataille)
Drums: Jeff Porcaro, Buddy Williams
Percussion: Paulinho da Costa
Bass: Scott Edwards, "Ready" Freddie Washington, Willie Weeks
Guitar: Ron Abrams, Donald Griffin, Michael Palmer
Harp: Dorothy Ashby
Horns: Robert Bryant, Sr., Jimmy Cleveland, William Collette, Gene Goe, Richard Perissi, George Price, Bobby Shaw, Phillip Teele
Strings: Murray Adler, Harry Bluestone, Kurt Dieterle, Endre Granat, Reginald George Hill, Anatol Kaminsky, Armand Kaproff, Ray Kramer, Margory Murphy, Gareth Nuttycombe, Nicholas Pisani, David Schwartz, Jerome Stepansky, Robert Sushel

Art Direction / Design: Stuart Kusher
Photography: Earl Miller
Lettering: John LePrevost

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