2019/10/29

Street Corner Symphony / Harmony Grits ('75)

A1Do ItB1Something Funky's Goin' On
A2The TrainB2Yes, I'm Ready
A3I'm Not Ready (to Let You Go)B3Wish That Love Was Magic
A4Stevie's WonderB4Best of My Love
A5Nice GuysB5Someone Sweet as You
A6Earth AngelB6Farewell My Love
 もしタイムマシンで過去へ旅行できるなら、みなさん、何をしますか?

 ひと握りの心ある人は、社会正義を実現することを考えるかもしれません。チョビひげのへっぽこ画家を若芽のうちに摘んでしまえば、たくさんの人命を救えるんじゃないか、みたいな。
 でもまあたいがいの回答は、カネ儲けかエロ関係になるでしょう。私だってもちろんそうですし。

 それとは別に、歴史を変えたり介入したりしない、小さな願いが私にはあります。
 最新の、そして最高のレコーディング機材を用意して、1930年代へとさかのぼり、アート・テイタムの演奏を録音したいのです。

 過去へ行けるんだから録音しなくていいじゃん、自分の耳で聴けばいいじゃん、なんてツッコミ入れんといてね。やっぱり私はライヴよりもレコードが好きなのです。
 最高の演奏を、最高の音質で楽しみたいのです。それも自宅で。よれよれのジャージ着て、ゴロゴロしながら。

 50年代のドゥー・ワップも、ヘボい音質のものが多い。というかほとんど全てヘボい。だからこの時代にも行きたいものですな。ストリート・コーナーに高性能マイクを仕掛けて、彼らのみずみずしいハーモニーを、シンフォニーを余すところなく記録できたら、どんなに素敵なことでしょう。

 しかし残念ながらタイムマシンなんてありゃしませんし、ダナーク人を倒すヒントは誰も教えてくれません。それが現実。
 そこで本作の出番となるわけです。

 70年代、アナログ・レコードの録音技術や製造技術は長足の進歩を遂げることになります。ハイファイ・オーディオのソースとして、今日のハイレゾ・サウンドに決して引けを取らない音質にまで到達してしまいました。(個人の感想です)
 そういう技術の発展を日々肌で感じていた音楽プロデューサーのジェリー・ラヴは、面白いアイディアを思い付きます。

「現代のテクノロジーで、往年のドゥー・ワップを再現しようやないか」

 そこで弟分のマイケル・ゼーガーを呼び出し、70年代ドゥー・ワップ再興プロジェクトを丸投げしました。大任を仰せつかったゼーガーはメンバー集めから曲作り、アレンジ、伴奏まで忙しく駆けずり回って粉骨砕身、兄貴の気まぐれなアイディアをやっとの思いで1枚のアルバムに結実します。それが本作。

 やはり気になるのは、全盛期のドゥー・ワップを高音質で再現しているのか、という点。
 まず音質について。悪くはない。でも、そんなによくもない。中の上ってとこ。まあいい。大切なのは内容だ。
 その内容が、何とも微妙なんですよね。70'sコーラス・グループのアルバムに、ちょっとばかしドゥー・ワップの要素を付け足してみました、といった程度。

 ストリート・コーナー・シンフォニーなんてグループ名つけているんですよ。全開バリバリのドゥー・ワップを期待せずにはいられませんよ。なのにドゥー・ワップの成分低めってどういうこっちゃ。なめとんか。

 でもね。駄盤とバッサリ斬り伏せられないサムシングが、本作にはあるのです。
 まず、70'sコーラス・グループとしてのクオリティ、高いです。実力者を揃えたのでしょう。寄せ集めのメンバーなのに、リード・ヴォーカル(交代制)もハーモニーも、なかなか堂に入ってます。
 そして、数少ないドゥー・ワップの部分が絶品です。ひとたびドゥー・ワップのモードに切り替わると、そこはもうブルックリンの街角。B5なんてたまらんものがあります。これこれ、こういうのを聴きたかったのさ。どうしてアルバム全編、これを貫かなかったんだよう。ンモー。

 中途半端に70'sソウルのフォーマットを墨守しようとしたのがいけなかったみたい。このメンバーで、混じりっけなし100%ピュアのドゥー・ワップを演ってほしい。演らせてみたい。
 そうか。タイムマシンで本作の制作現場を訪れれば、この願いを実現できるかもしれない。よーし待ってろよダナーク人。

 なお本作、おおむねNYで録音されています。A3、A6、B3のみLA録音。
 それぞれ現地のミュージシャンが伴奏しています。よって、NYではゴードン・エドワーズが、LAではスコット・エドワーズがベース演奏を担当。
 1枚のアルバムに、エドワーズ姓のベース達人が並び立ってます。共演はしてませんけど。何だかW浅野みたいで楽しいじゃないですか。これでバーナード・エドワーズがいれば役満か。
★★★

Street Corner Symphony Is
Maurice "Chess" Chestnut: 1st Tenor, 2nd Tenor, Baritone & Lead
Jesse "The Hare" Harris: Bass
Milton "Big Red" Hayes: 1st Tenor, 2nd Tenor & Lead
Lawrence "Baby Boy" Miller: 2nd Tenor & Lead
Luigi "Sweet Lou" Smith: Baritone & Lead

The Symphony
Randy E. Brecker, Eddie "Bongo" Brown, Carlos-Martin Jay Charles, Cornell L. Dupree, Gordon Edwards, Scott Edwards, Stephen K. Gadd, James E. Gadson, Arnie Lawrence, Rick Marotta, Hugh McCracken, Don Peake, Bernard Purdie, Lee Ritenour, Michel Rubini, Richard Tee, Tommy Vig, Michael Zager

Executive Producer: Jeffrey Cheen for Short Dog Productions

Producers: Jerry Love & Michael Zager for Love-Zager Productions, Inc.

Engineer: Ed Rice
Asst. Engineer: Gary Roth
Studio: A&R Recording, New York Except A3, A6 and B3 at Clover Studios, Hollywood
Mixing: A&R Recording, New York Except A3 and A6 at Sound Factory, Hollywood
Mastering: The Master Cutting Room, New York by Gregg Calbi

Invaluable Help: Susan McCusker

Photography: Barbara Rossi
Package Design & Illustration: Mike McCarty

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