2019/08/20

Tyrone Davis / Home Wrecker ('74)

A1HomewreckersB1It Ain't Me No More
A2This TimeB2I Got a Sure Thing
A3Is It Something You've GotB3You Don't Have to Beg Me to Stay
A4After All This TimeB4A Woman Needs to Be Loved
A5Was I Just a FoolB5How Could I Forget You
 アルバムのタイトルはごらんの通り、"Home Wrecker"です。
 そしてシングル・ヒットした収録曲A1のタイトルは、"Homewreckers"であります。

 似ているからややこしい。それは作り手たちにとっても同様だったようで、アルバムのレーベルに印刷されたタイトル間違ってますぜ。


 さて本作、じっくり聴いてみると音が揃っていないことに気付きます。
 曲によりホーン・セクションが左から聴こえたり、右になったり、左右に分かれていたり。ドラムやその他の楽器の位置も然り。ずいぶんバラツキがあります。音質も曲によってまちまちです。

 その理由は、どうやらこういうことらしい。

 まず先行したシングル盤"Homewreckers"がヒット。そこでレーベルのダカー・レコーズは"Homewreckers"を目玉にしたアルバムの制作を急遽、決定します。シングル・ヒットの熱が冷める前に大急ぎでアルバムを発売しなければならず、他の収録曲をのんびり作っている時間なんてありません。
 というわけでダカーの倉庫からタイロン・デイヴィスの過去音源をほじくり出し、どうにかこうにかアルバム1枚分の分量に盛り合わせ、ちゃっちゃとプレスして店頭に並べた。それが本作なのです。

 何せ特急仕事のこと。腰を据えて、各曲のバランスや音質を揃える作業を施す余裕なんてなかったのでしょう。一刻を争う事態ゆえ、仕方のないところではあります。

 レーベルの印刷をチョンボしたのも、短納期を迫られていたからに違いない。シングル曲のタイトルとアルバム・タイトルが似て非なるもの、というワナにまんまとかかってしまいました。途中でミスプリに気付いたところで、やり直してなんかいられない。作業が遅れれば、それだけ出荷が先に伸びてしまいますからね。

 1枚でも多くレコードを売るためには、最適のタイミングで市場に投入しなければなりません。遅れれば遅れるほど、それだけ機会損失するのです。多少の粗ならそりゃ目をつぶるでしょう。
 レコード・ビジネスが、どれだけ恐ろしいレッド・オーシャンであるか。ダカー・レコーズの拙速仕事は、われわれにその一端を教えてくれるのです。

 本作、収録曲の大半が既発だし、音質も不均一だし(しかもB5の後半で右chの音がいきなり消失する)、レーベルの印刷しくじってるし、急ごしらえの欠点については枚挙にいとまがありません。
 しかし心配無用です。これだけのハンデを背負いながらも、タイロン・デイヴィスのヴォーカリストとしての魅力は、いささかも損なわれていません。うん、この男は本物だ。
★★★

A1 Produced by Carl Davis & Otis Leavill / Arranged by James Mack
A2, A4, B5 Produced by Willie Henderson / Arranged by Tom Washington
A5 Produced by Willie Henderson / Arranged by Jerry Long
B3 Produced by Richard Parker & Leo Graham / Arranged by James Mack
B1, B2 Produced & Arranged by Monk Higgins
A3, B4 Produced & Arranged by Willie Henderson
Engineer: Craig Barksdale

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