2019/06/19

Ray Bryant / MCMLXX ('70)

A1Stick with ItB1Shake-a-lady
A2Let It BeB2Unchained Melody
A3Bridge over Troubled WatersB3My Cherie Amour
A4Hey JudeB4Spinning Wheel
 ソニー・ロリンズの『ワークタイム』は、私の大好きなアルバムです。ここでピアノを弾いていたのが、レイ・ブライアント。どれだけ粗暴で攻撃的なプレイをしようとも、そこはかとない気品を感じさせる紳士です。ハード・バップ全盛期はけっこうな売れっ子でした。
 ストレート・アヘッドなジャズが混迷を深めた60年代も、あちこちのレーベルを渡ってリーダー作を発表し続けています。同業者が思うような活動をできなかった冬の時代、ブライアントはしたたかに生き延びました。

 なぜ、彼がジャズ氷河期でもピンピンしていたのか。
 その謎を解くカギが、本作であります。曲目をごらん下さい。当時のヒット・パレードですよ。ビートルズ・ナンバーが2曲もあるし。
 こういう企画を持ち込まれても、二つ返事で受けてしまう人だったのでしょう。これがもし、セロニアス・モンクやセシル・テイラーだったら「何でオレがこんな仕事しなきゃなんねーんだ!」と激高し、灰皿を付き人に投げつけていたかもしれません。

 しかしヒット・パレード中心の安易な企画だからといって、レイ・ブライアントは手を抜きません。ただひたすら、よい音楽をリスナーに届けようと愚直に、真摯にピアノに向かっています。仕事を引き受けたからには、最善の努力を惜しまない人なのです。こういう人だからこそ、機会に恵まれ、仕事が途切れることなく晩年までジャズでメシを食えたのではないかな。

 A面はピアノ・トリオに、ホーン・セクションまたはストリング・セクションが付け足されています。なおホーンの編曲はアリフ・マーディンが、ストリングスはエウミール・デオダートが担当。そしてB面はピアノ・トリオのみです。
 聴きどころはスティーヴィー・ワンダーのヒット・ナンバーB3。あのメロディをゴリゴリに弾きまくっています。アドリブ成分低め。ていうかゼロ。アドリブ・パートの有無なんて、どうでもいいことじゃないか。

 B2"Unchained Melody"はみなさんよくご存知の有名曲。しかしネタ元である映画『アンチェインド』を見た者は(私の周囲には)ひとりもいません。どんな映画なんだろ。見たいなあ。テレビ放映してくれよう。
★★★

Ray Bryant: Piano
Chuck Rainey: Electric Bass
Jimmy Johnson: Drums

A1, A3 and A4
Joe Gentle: Tenor Sax
Leon Cohen: Bass Clarinet
Ron Carter: Acoustic Bass
Selwart Clarke, Gene Orloff, Emanuel Green, Noel DaCosta, Winston Collymore, Joseph Malignaggi, Paul Gershman, Julien Barber, Matthew Raimondi: Violins
Charles McCracken: Cello
Arranged by Eumir Deodato

A2
Joe Newman: Trumpet
George Dorsey: Alto Sax
King Curtis: Tenor Sax
Pepper Adams: Baritone Sax
Garnett Brown: Trombone
Arranged by Arif Mardin

Recorded at Atlantic Recording Studios, New York City
Recording Engineers: Lewis Hahn & Gene Paul
Re-mix Engineer: Lewis Hahn
Photography: Joel Brodsky
Cover Design: Haig Adishian
Produced by Joel Dorn

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