2018/09/10

David Pomeranz / It's in Everyone of Us ('75)

A1It's in Everyone of UsB1Greyhound Mary
A2TheaB2If You Walked Away
A3Tryin' to Get the FeelingB3High Together
A4The Hit Song of All TimeB4Home to Alaska
A5FlyingB5Clarence
 この地味なシンガー・ソングライター最大の功績は、バリー・マニロウが歌ったA3、これにつきます。
(マニロウのアルバム『フィーリング』に収録)

 ハッピーエンドで結ばれた男女の、その後を描いたとてつもなく苦いオトナの世界。

 ちなみにマニロウ・バージョンと作者バージョンは歌詞がじゃっかん違います。
 マニロウ版の歌詞は「なあドクター聞いてくれよ」に始まる、医師(カウンセラー?)との悩み相談という設定。まあ一方的にしゃべっているだけなんですが。
 対する本作の作者バージョンは、心の中でブツブツぼやいている感じ。ドクターなんて出てきやしません。

 マニロウ版がダイアローグで、ポメランツがモノローグとでも言えばいいのでしょうか。ともあれ作者バージョンと比較すると、マニロウの豪快な盛りっぷりが際立ちます。

 妻(または恋人)にときめきを感じなくなってしまった。しかしそのことを彼女に気取られるわけにはいかない。心の内を彼女にバレる前に、何としても出会った頃のときめきを取り戻さなあかん!という、サスペンスフルでコン・ゲームな状況は、オリジナルにはありません。葛藤のポイントが偽りの生活に変更されちゃってます。
 この残酷なまでのやさしさを背負ってしまった苦衷に耐えかね、「何とかしてくれよ先生」と医師に焦燥を叩きつけているのです。

 これらをふまえて両バージョンを聴き比べると、込められた感情の度合いがそのままサウンドに反映されているのがわかります。
「やばいよ先生」「どうしよう先生」という切迫感をドラマティック・バラードの燃料としたマニロウ版。
 ああ、あの頃のときめきが戻ることはないんだろうな…という諦観を淡々と歌い上げる作者バージョン。

 やはりというか、マニロウ版の圧勝になるわけです。ただし作者バージョンにも捨てがたい味があり、中盤から熱っぽいフレーズを連発する左chのギターがなかなか健闘してします。

 まあそんなわけで本作は、シンガー・ソングライターにありがちな、全編ボソボソと歌っている地味なアルバムです。その地味っぷりが妙味となったA2がいちばんの聴きどころ。この曲もA3同様、夫婦の危機を歌っているんだよな。実体験かなあ。

 ちなみにちょうどこの頃、スティーヴィー・ワンダーの『ファースト・フィナーレ』が売れまくっていました。
 スティーヴィーのバック・コーラスに、ジャクソン5を起用した豪華共演が大いに話題になったものです。

 本作のA4はそのへんにあやかったのか、ファラガー兄弟がゲスト参加しています。ポメランツのバックにファラガー兄弟。うーん地味だ。ことごとく地味なアルバムだ。
★★★

Produced by Vini Poncia for Richard Perry Productions
Recording and Remix Engineer: Bob Schaper
Additional Recording: Ron Hitchcock
Recorded at Sunset Sound Recorders, Hollywood
Assistant Engineer: Reed Stanley and
Producer's Workshop, Hollywood
Assistant Engineers: Joe Bellamy and Galen Senogles
Remixed at Sound Labs, Inc., Hollywood
Disc Cutting: The Mastering Lab, Hollywood / Ron Hitchcock
Production Coordinator: Anne Streer
All Songs Written by David Pomeranz
Photography: Gary Hinckley
Design: Bob Heimall

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