2018/07/05

Randy Crawford / Secret Combination ('81)

A1You Might Need SomebodyB1Rio de Janeiro Blue
A2Rainy Night in GerogiaB2Secret Combination
A3That's How Heartaches Are MadeB3When I Lose My Way
A4Two LivesB4Time for Love
A5You Bring the Sun outB5Trade Winds
 ランディ・クロフォードはクルセイダーズの『ストリート・ライフ』でリード・ヴォーカルに起用され、人気に火がつきました。

 思えば「ストリート・ライフ」の名唱は、彼女自身が路上生活スレスレのタフな境遇を生き抜いてきたことを抜きにして語れません。
「何が何でも成功してやるんだ」というハングリー精神と、「これがダメだったらもう後がない」という崖っぷちの緊張感のうず巻く中、レコーディングに臨んだ彼女は、一か八か、のるかそるかの大舞台で、もてるもの全てを歌に叩きつけ、魂を削るかのように吼え、叫び、そして解放したのです。

 結果はご存知の通り、大成功。これ以上ないくらいの、おそらくはクルセイダーズのメンバーでさえ予想しえなかったほどの凄まじいパフォーマンスを披露して、めでたく名盤誕生とあいなりました。

 サクセスわしづかみの彼女は、味をしめたクルセイダーズのプロダクションでリーダー・アルバムを制作したのち、さらなるビッグ・ビジネスを目指してクルセイダーズから離れ、大物プロデューサー、トミー・リピューマの下に身を寄せます。

 最初の打ち合わせで彼女と対面したリピューマは、おそらくこう思ったことでしょう。
「だめだこりゃ!」
 路上生活の危機を脱し、成功を手にした彼女には、もはやハングリー精神のかけらもありません。おいしいものを食べ、ブランド服を着て、高級車の送り迎え。プール付きの豪邸に住み、掃除はメイドがやってくれる。もちろん歯はきっちりホワイトニング済み。
 そういう生活に慣れてしまったのです。

 本人がリッチでマイルドな生活をしているのに、うわべだけ吼えたり叫んだりしても、リスナーの心には響きません。当然ながら「ストリート・ライフ」を超えるパフォーマンスは望むべくもない。

 そこで優秀なプロデューサーのリピューマは考えます。もはやテンパった歌を歌わせても、ものにはなるまい。憂き世離れした、アダルトでオサレでコンテンポラリーな路線で行くしかないだろう、と。

 そうして生まれたのがこのアルバムです。
「ストリート・ライフ」のような、激しい咆哮はありません。やさしく洗練された、スムーズにして毒のない音楽。イージー・リスニング・ブラコンとでも言いましょうか。

 先日、近所のパスタ屋で遅いランチを食べていたら、本作のA2が店内に流れました。
 コーヒー飲みながらたべってるおばちゃんたちや、マンガを読んでいるスーツ姿のサボリーマンがいる、ゆるい時間の流れるちょっぴりアンニュイなパスタ屋の昼下がりに、彼女のやわらかな歌声がじつにピッタリ合っていました。

 リピューマの狙いはこのへんにあったのではないでしょうか。
 衣食満ち足りた彼女なら、それをふまえた歌い方でいい。何度も無理して「ストリート・ライフ」の二番煎じ、三番煎じをする必要なんかない。
 アーティストの、その時その時の「クリーム」を搾り出すのがプロデューサーの仕事であるなら、リピューマはやはり名人と呼ぶにふさわしいでしょう。

 ちなみにクルセイダーズの故ジョー・サンプルは本作について、「彼女の持ち味を活かしてない」と苦言を呈したらしい。
 くさしたくなる気持ちはわからなくもないんだけどね。私はこっちの路線も悪くないと思います。
 B4からB5の流れが好きだ。
★★★

Produced by Tommy LiPuma

Recorded and Mixed by Al Schmitt at Sound Labs and Capitol Recording, Hollywood
Assistant Engineers: Stewart Whitmore, Don Henderson
Production Coordination: Noel Newbolt
Mastered by Mike Reese at the Mastering Lab, Hollywood

Rhythms Arrangements by L. Leon Pendarvis
Rhythm Section
L. Leon Pendarvis: Keyboards
Abraham Laboriel: Bass
Jeff Porcaro: Drums
Steve Lukather: Guitar
Dean Parks: Guitar
Lenny Castro: Percussion
Robben Ford: Electric Guitar on A4
Ernie Watts: Flute Solo on B1
Neil Larsen: Organ on A2, B3, B5

Horn Arrangement on B3: Larry Williams and Bill Reichenbach
Horn Arrangement on A1: Bill Reichenbach
Horn Section
Larry Williams
Bill Reichenbach
Gary Herbig
Jim Horn
Chuck Findley

String Arrangements on A1, A3, A4, B1, B2, B4, B5: Nick DeCaro
String Arrangements on A2, A5: Dale Oehler
Contractiong by Frank DeCaro

Background Vocals
Phyllis St. James
Marti McCall
Petsye Powell
Alphanette Silas

Art Direction: Richard Seireeni
Photography: Phillip Dixon
Lettering: Bob Maile

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