A1 | I Concentrate on You | B1 | Symphony |
A2 | If I Love Again | B2 | Flying Down to Rio |
A3 | Some Other Spring | B3 | When Day Is Done |
A4 | Say It Isn't So | B4 | 'Tis Autumn |
この時代、コンコード・レコーズは自前で制作するだけでなく、「持ち込み」も募っていたようです。
例えばスタン・ゲッツの人気アルバム『ザ・ドルフィン』は、ゲッツ自らライヴ録音のテープを持ってセールスに来たらしいぜ。
当然ながら、これら持ち込まれた素材はいつものコンコード音質にはなりようがありません。
本作もそうで、決してひどい音質ではないとはいえ、コンコード諸作のクオリティを期待するとちょっと残念な仕上がり。
病魔に侵され、死期を悟ったリッチー・カミューカが、私的に録音していたテープをコンコードに託したのです。それが本作。だからコンコード本隊のプロダクションではありません。
リッチー・カミューカは、西海岸ジャズで活躍した、たいへん名高いテナー・サックス奏者です。
彼の代表作といえば、西海岸ジャズ全盛期の50年代に吹き込んだ『リッチー・カミューカ・カルテット』でしょう。
当時20代のカミューカ、まさに意気揚々。若さが爆発しています。
西海岸でホンの束の間、ドドドと作品を発表し、やがて霧の彼方へと消えた夢幻のレーベル、モード・レコーズを代表する一作。私もこれ、大好きです。
なおモード・レコーズについては、80年代にV.S.O.P.という業者が熱心にリイシューしてくれたおかげで、現在ではその全貌が明らかになっております。今や幻でも何でもなくて、こうして私も手にすることができたわけ。ありがたや。ラヴ・イズ・V.S.O.P.です。
50年代の若々しいカミューカと、晩年の本作を聴き比べると、20年という歳月がもたらした変化がわかります。
彼はとても素直に、そしてとても素敵に老けたのです。
プロレスラーに例えるなら、若い頃は体力にまかせてガンガンぶつかっていくタイプ。それが齢を重ねるごとにインサイドワークに磨きがかかり、上手さや渋さで観客を唸らせる地味な省エネ・ファイトへとシフトしていきます。初来日外人選手の実力を検分するようなカードを組まれたり、団体がプッシュする若手のタッグ・パートナーに起用されたりして幾星霜、しまいにゃレフェリーの見てないところで悪さをする老獪なレスラーへと変貌を遂げます。
若さが永遠でない以上、これはとても自然な、レスラーの歳の取り方なのです。
カミューカも、加齢に抗うことなく、しみじみと老いを受け入れました。元気ハツラツなプレイは後退し、その代わりに「のほほん」なテイストがにじみ出てきたのです。
ジャズメンとして、理想のエイジングと言えましょう。ジャズの世界にはときどき、老いてよりおかしな方向へ走ってしまう人がいますからね。
本作には、どのトラックにも「のほほん」としか言いようのない、老熟した味わいが満ちあふれています。顕著なのはオーラスB4。カミューカさん、とうとう歌ってしまいました。
歌詞の内容は、秋から冬へ季節のうつろいを描いたものらしい。自身の余命を意識したのかもしれません。うまいとかヘタとか、そんなの超越した歌唱です。
寄り添うマンデル・ロウの伴奏がじつに、じつに塩辛い。笑顔で送り出そうとしたのに、こらえきれず涙がこぼれ落ちたのでしょう。その涙の味。まさにギターがジェントリーにウィープスだ。
かように人間くさいアダルトな世界は、コンコードのレーベル・カラーにピッタリですよね。カミューカもそのへん心得ていたからこそ、白鳥の歌をコンコードに持ち込んだのだと思う。
例えばスタン・ゲッツの人気アルバム『ザ・ドルフィン』は、ゲッツ自らライヴ録音のテープを持ってセールスに来たらしいぜ。
当然ながら、これら持ち込まれた素材はいつものコンコード音質にはなりようがありません。
本作もそうで、決してひどい音質ではないとはいえ、コンコード諸作のクオリティを期待するとちょっと残念な仕上がり。
病魔に侵され、死期を悟ったリッチー・カミューカが、私的に録音していたテープをコンコードに託したのです。それが本作。だからコンコード本隊のプロダクションではありません。
リッチー・カミューカは、西海岸ジャズで活躍した、たいへん名高いテナー・サックス奏者です。
彼の代表作といえば、西海岸ジャズ全盛期の50年代に吹き込んだ『リッチー・カミューカ・カルテット』でしょう。
当時20代のカミューカ、まさに意気揚々。若さが爆発しています。
西海岸でホンの束の間、ドドドと作品を発表し、やがて霧の彼方へと消えた夢幻のレーベル、モード・レコーズを代表する一作。私もこれ、大好きです。
なおモード・レコーズについては、80年代にV.S.O.P.という業者が熱心にリイシューしてくれたおかげで、現在ではその全貌が明らかになっております。今や幻でも何でもなくて、こうして私も手にすることができたわけ。ありがたや。ラヴ・イズ・V.S.O.P.です。
50年代の若々しいカミューカと、晩年の本作を聴き比べると、20年という歳月がもたらした変化がわかります。
彼はとても素直に、そしてとても素敵に老けたのです。
プロレスラーに例えるなら、若い頃は体力にまかせてガンガンぶつかっていくタイプ。それが齢を重ねるごとにインサイドワークに磨きがかかり、上手さや渋さで観客を唸らせる地味な省エネ・ファイトへとシフトしていきます。初来日外人選手の実力を検分するようなカードを組まれたり、団体がプッシュする若手のタッグ・パートナーに起用されたりして幾星霜、しまいにゃレフェリーの見てないところで悪さをする老獪なレスラーへと変貌を遂げます。
若さが永遠でない以上、これはとても自然な、レスラーの歳の取り方なのです。
カミューカも、加齢に抗うことなく、しみじみと老いを受け入れました。元気ハツラツなプレイは後退し、その代わりに「のほほん」なテイストがにじみ出てきたのです。
ジャズメンとして、理想のエイジングと言えましょう。ジャズの世界にはときどき、老いてよりおかしな方向へ走ってしまう人がいますからね。
本作には、どのトラックにも「のほほん」としか言いようのない、老熟した味わいが満ちあふれています。顕著なのはオーラスB4。カミューカさん、とうとう歌ってしまいました。
歌詞の内容は、秋から冬へ季節のうつろいを描いたものらしい。自身の余命を意識したのかもしれません。うまいとかヘタとか、そんなの超越した歌唱です。
寄り添うマンデル・ロウの伴奏がじつに、じつに塩辛い。笑顔で送り出そうとしたのに、こらえきれず涙がこぼれ落ちたのでしょう。その涙の味。まさにギターがジェントリーにウィープスだ。
かように人間くさいアダルトな世界は、コンコードのレーベル・カラーにピッタリですよね。カミューカもそのへん心得ていたからこそ、白鳥の歌をコンコードに持ち込んだのだと思う。
★★★ | 採点表を見る |
Richie Kamuca: Tenor Saxophone and Vocal on B4
Mundell Lowe: Guitar
Monty Budwig: Bass
Nick Ceroli: Drums
Produced by Richie Kamuca
Engineer: J. Jarvis
Art Direction: DH Studio
Cover Portrait by Sylvia Barnes
Mundell Lowe: Guitar
Monty Budwig: Bass
Nick Ceroli: Drums
Produced by Richie Kamuca
Engineer: J. Jarvis
Art Direction: DH Studio
Cover Portrait by Sylvia Barnes
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