2018/07/17

Swing ('81)

A1Big BucksB1Let the Good Times Roll
A2The Right IdeaB2Dancing in the Dark / The Closer I Get You
A3Serenade in BlueB3Trocadero Ballroom
A4Tweedlee DeeB4Crazy He Calls Me
A5Caravan / MirageB5Make Love to Me Baby
 ジャケットにどどーんと"Swing"ですよ。これだけではアルバム・タイトルなのか、アーティスト名なのかさえわかりません。
 Swingというからにはジャズなのか、と思いきやレーベルはプラネットで、プロデューサーはリチャード・ペリーなのであります。普通のジャズでは なさそうだ。

 店頭で本作を手にした誰もが思うであろう「いったいどういうアルバムなんだ?」という疑問に答えるべく、リチャード・ペリーはジャケットの裏に解説文(推奨文)を載せました。
「スイング・ジャズをナウいサウンドでお楽しみ下さい」
そんなようなことが書いてあります。
 曲目を見ると、たしかにビッグ・バンド全盛期のスタンダード・ナンバーがいくつか並んでいますね。

 シンセサイザーやビンビン・ベースで今風に生まれ変わった、スイング・ナンバーの数々。
 お店で手にしたときは激しく地雷の予感がしていたものの、いざ買ってみたら意外な拾い物でした。

 中古レコード好きならおわかりいただけるでしょう。胸中にわき起こる地雷の予感にあえて背き、気持ちを奮い立たせて買い、アタリだったときってめちゃめちゃ嬉しいんですよね。
 この興奮と感動。「勝ったぞー」という陶酔感。何に勝ったんだよ?(ちなみに本作はそこまで大アタリというわけではない)

 ところで、リチャード・ペリーはなぜ、このような企画に手を出したのでしょうか。
 70年代、ジャズ・ファンはフュージョンに流れました。やがて70年代も末になると、フュージョンは停滞し、ファンに飽きられてしまいます。

 しかしフュージョンを離れても、今さらジャズには戻れない。もちろんパンクやニュー・ウェイヴは趣味じゃない。そういうボヘミアンな旧ジャズ・ファンを、ジャズに新味を加えることによって呼び寄せようという商魂があったのではないか、私はそう考えます。

 一方で、そういうビジネス上の打算の他に、もっと気高い理由があったような気もしなくはない。
 ビッグ・バンドの時代には、これら音楽がポピュラー音楽の王様でした。老若男女がグレン・ミラーやドーシー兄弟、ベニー・グッドマンに夢中になったのです。
 ところが80年代に入る頃には、ジャズは一部のマニアのみが愛聴する、小さな小さなジャンルになり下がっています。

 ジャズに、あの頃の栄光を取り戻そう。ジャズ好きのペリーはそう考えたんじゃないだろうか。
 そのためには、そこいらのジャズと同じことをやっていてはダメだと。まあそういうわけで、ナウいサウンドとクロスオーヴァーすることになってしまったのでしょう。
「もう一度、ジャズの黄金時代を…」
 何と壮大な企みでしょう。結果はやはりというか、火を見るより明らかというか、スパルタカスの反乱並みに失敗する運命だったとしても、私は支持します。たとえ思惑が頓挫しようとも、本作を聴く上ではどうでもいいことですし。

 B3"Trocadero Ballroom"で微妙なノドを聴かせるヴォーカルはスティーヴ・マーチという人。メル・トーメの息子さんらしい。
★★★

Produced by Richard Perry

Vocalists
Charlotte Crossley
Lorraine Feather
Steve March

All Horn Arrangements by Charles Calello Except B3 Arranged by Tommy Newsom
Basic Track Arrangements by Charles Calello and Richard Perry

Basic Tracks Recorded by Gabe Veltri
Horns Recorded by Bill Schnee
Remix Engineer: Bill Shcnee
Assistant Engineers: Dana Latham and Stuart Furusho
Recorded and Mixed at Studio 55, Los Angeles, California
Mastered at Precision Lacquer by Stephen Marcussen and Larry Emerine

Conceived by Richard Perry and Joel Silver
Production Coordinators: Susan Epstein and Bradford Rosenberger
Illustration by Ron Larson and Mike Donaldson
Photography by Jim Shea
Design and Art Direction by Kosh

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